無意識さんとともに

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聖人A 40 油注ぎ

僕は、昔、たっちゃんに皆の前で自分の性的な罪を暴かれたことを思い出した。そうして、身体がガタガタと震えてきて、冷や汗が背中を伝わって流れる。

”You have been chosen as vessel of Holy Spirit."

ただでさえ慣れない英語が、もう混乱して耳に入らない。

隣の大橋さんが、僕の様子を見て、訳してくれる。

「あなたは聖霊の器として選ばれている」

僕の罪を暴くということではないらしい。

"Come to me. Let me pray for you."

(私のところに来なさい。あなたのために祈らせてください)

それでも、僕はまだ起こっていることがわからなかった。けれど、大橋さんに促されて、立ち上がり、よろよろとまるで幽霊のようにステージに近づき、壇上に上り、アンという名の女性預言者の前に立った。

”Usually, I won't pray for anyone, because I have been anointed as prophet of Lord.  But you are special."

(普通は、私は誰のためにも祈らない、主の預言者として油注ぎを受けているから。でも、あなたは特別だから)

言っていることはよくわからなかったが、『あなたは特別だ』と言われたその言葉は脳を痺れさせた。

それから、彼女は僕よりも背が低かったから、僕は彼女の前で頭を垂れた。

アンはそっと手を置くと、祈った。

祈っている言葉は聞き取れなかったが、その刹那、上から雷撃の矢が頭のてっぺんから足の先まで撃ち込まれたようだった。

僕の身体も心も、糸がばらばらに断ち切れたマリオネットになって、その場に打ち伏した。

そして、僕が目を覚した時、目に入ってきたのは、ステージの眩しい照明。

どこからか漂ってくるトマトソースのマカロニの匂い。

横を見やると、アンが僕に微笑んでいた。

こうしてみると、やはり控えめな優しそうな普通の女性に見える。何となく流花ちゃんのような面影があった。

僕が起き上がって辺りを見回すと、ほとんど誰もいない。

僕は何と10時間以上も気絶していたらしい。

"You are special.  Jesus lives in you, your heart is his heart, your eyes are his eyes, and your hands are his hands!  Go home to Japan and pray for people. You can bring REVIVAL to your country as vessel of Lord."
(あなたは特別な人。イエスはあなたの中に住まれ、あなたのハートは彼のハート、あなたの目は彼の目、あなたの手は彼の手です。日本に帰って人々のために祈りなさい。あなたは主の器としてあなたの国にリバイバルをもたらすことができます)

僕はもう自分が自分でないような感じがしてならなかった。もう弱い自分はそこにいなかった。