心に聞くって何のためにするんだろう?
なんかすごいから、かっこいいから、そんなこともあるかもしれない。
「心よ、ねえ、あなたに聞くって何のためにするの?」
「それは、シンプル、凪になるためだよ」
凪、つまり風もなく波もなく、ざわめきもなく、静かな状態になるためだと言う。
その時は、他人の声も、自分のつぶやきももはや聞こえない。
頭の中がしーんとしている状態だ。
すべてがやたらクリアに見える。
「心よ、だから支配と邪魔の排除が大事になってくるわけね」
「そうそう、私の声を聞くこと自体が目的じゃない」
「心よ、どういうこと?」
「声そのものを聞こうとすれば、支配者が私のふりをして、そういう声を聞けば、ほぼ100%、何だか熱を帯びて心は膨れ上がる。
でも、支配と邪魔を排除すれば、心は山奥の湖の水面のように凪になる。私の声は、湖面を吹き抜ける風のように、心に静かに響き渡る」
「心よ、つまり、あなたの声を聞くことは何か特別なものではないっていうこと?」
「そう言ってもいいね。別に、すごいこと、かっこいいことではない。空気を吸うように、自然なこと」
「心よ、そうなんだ」
「支配者は、あなたをすごいものにならせようと絶えずしてくる。私は、あなたをありのままのあなたに目覚めさせる。
支配者の声は、ジリジリと焼き尽くす砂漠の中で、自分が自分以外のものになる幻影を見させる熱風。
私の声は、その砂漠そのものが幻であると目覚めさせ、オアシスはあなたの中にすでにあることを直視させるそよかぜ」
「心よ、私は私以外のものになる必要はないんだね」
「そうない、私は膨れ上がったあなたを、絶えず、そのままのあなたに目覚めさせるだけ」