無意識さんとともに

https://stand.fm/channels/62a48c250984f586c2626e10

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 202 はまっちの誕生日当日2

西武新宿駅の改札口を出ると、右に折れて、ガード下をくぐる。

横断歩道を渡り、J R新宿駅に向かう。

土曜日とはいえ、かなりの人混みだ。

いきおい、僕たちは距離を詰めてくっついて歩かざるを得ない。

「そろそろ、どこに行くのか教えてくれるのかな?」

「JR新宿駅に着いたらわかるよ」

「もう焦らさないで教えてよ」

はまっちは僕の服を引っ張る。

「えーと、当ててみて」

「藤沢かな」

藤沢は確かに、はまっちの生まれ故郷だ。けれど、前にも行ったし。

「残念でした」

そうこうしているうちに、JR新宿駅に着いた。

「ちょっと待って」

僕は切符を2枚買って、はまっちのところに戻ってきた。

「さあ、どこでしょう?」

僕は手を開いて、握っていた切符を見せた。切符は少し汗で湿っている。

「横浜!」

「そこから先もあるんだけどね」

「横浜って私のホームグラウンドじゃない」

「そう、懐かしいと思って」

「確かにね、といっても神奈川にいたのは小5の1学期途中までだから、詳しいというほどじゃないんだけどね」

「僕は、全然知らないよ、色々調べはしたけど」

「うえっちがどんなデートコースを準備してくれたのか期待だわ」

僕は『デート』という言葉に心がびくんとなった。

「ハードル上げないでくれよ。そろそろ、電車の時間だよ」

腕時計を見ながら答えた。

僕たちは、湘南新宿ラインに乗った。途中、はまっちは、神奈川県のあるあるネタを披露してくれた。

僕は、神奈川について知っているのは、はまっちと行ったことのある藤沢と、今回調べた横浜についてのわずかな知識しかなかったから、どれも興味深かったし、はまっちの知らないところを知ることができてうれしかった。

そう言えば、何だか、はまっちのちょっと独特な雰囲気が神奈川っぽいのかもしれないなどと思ってしまった。

そうしているうちに、横浜駅に着いた。

「さて、ここで乗り換えるよ」

「うん」

横浜駅新宿駅ほどではないが、やはり人で溢れている。ただ、何だか、歩いている人の感じがちょっと洒落ているような気がする。

駅を横切り、普通よりもちょっとスピードが速いエスカレーターで地下に降りていく。僕は券売機で、みなとみらい線一日乗車券を2枚買った。

音もなくスーとやって来た電車に乗り込むと、何だか、妙にカップルが多い気がする。

特にどうということはなくても、こちらから見るとカップルだということがわかってしまう。

『僕たちもそんなふうに見えているのかな』と思った途端、

「私たちもカップルに見えるのかな?」

はまっちがくすぐったい声でささやくのでびっくりしてしまった。