無意識さんとともに

https://stand.fm/channels/62a48c250984f586c2626e10

催眠の現象学16 過去の改変

記憶は流れるのかもしれません、過去から現在を通って未来へ、また、未来から現在を通って過去へと。

 

小説を自分のために書いていますが、面白いことが我と我が身に起こっている気がします。

 

最初に書いた小説は自分の体験が70%ぐらいで、2作目、3作目…と自分の体験そのままの割合はどんどん減ってきています。

ただ、自分の体験そのままではないにしても、自分の体験を変形して書いていることは確かとも言えます。

どういうことかと言うと、あの時、あの場所で、自分が違う選択肢を取っていたらということで、自分の体験=ドミナントストーリーではない、違う選択肢を取った時に生まれるもの=オルタナティブストーリーが小説を違う方向に運んでいくのです。

 

それは小説の中だけのことで、現実の自分とは関係ないと一見、思えるのですが、小説というオルタナティブストーリーを書くことで、自分の過去の記憶が改変されているようなのです。

どこかしらで、「想像力は創造力だ」と聞いたことがあるのですが、そうなのかもしれません。


記憶というものは、そもそも曖昧なもので、事実そのものというよりも、事実に対する私の解釈だということもできます。
私から見た事実(実は解釈)、同じことをBさんから見た事実(実は解釈)、同じことをCさんから見た事実(実は解釈)…というわけで、『真実はいつもひとつ』というけれど、実際は、事実は解釈というカット面の多面体だったりすることもあります。

 

だから、私の中の解釈が変わることで、過去の事実の記憶は簡単に改変されていきます。

 

この頃、いろいろ苦手だったことがそうでもなくなっているのですが、その根本にはこういう改変が起こっているのかもしれません。

あれほど、もう絶対許せないと思うほど酷い目に遭わされたあの人の優しい言動が浮かんでみたり、過去の相手の記憶の相貌が形を変えていきます。

記憶は河のようなもので、とどまることもなく形や方向を変えながら、絶えず流れていきます。

 

ただ、流れの中に、時折、トラウマという大きな岩があって、それによって河が分かれたり、堰き止められたり、澱んだりすることもありますが、

岩を取り去ると、また、流れていくのです。

 

解釈が変わり、オルタナティブストーリーが生まれることで、過去が変わり、現在が変わり、未来が変わり、さらに未来が変わることで、また現在が変わり、過去が変わり…そんな流れがえんえんと続いていくこともあるのでしょう。