無意識さんとともに

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催眠!青春!オルタナティヴストーリー 146〜U46 シンデレラ城の前で

それから、ディズニーランドに着いたのが、午前10時ぐらいだった。

結構、並んでいて入場するのに時間がかかった。

「まず、どこに行きたい?」

「わたしはシンデレラ城の前で写真が撮りたいな」

同じことを考えている人が結構いるのか、シンデレラ城の前にもちらほら人がいた。

ぼくは、ショルダーバッグから一眼レフを取り出した。

「なんだかすごいカメラね」

「父親が飽きて使わなくなったカメラだよ」

ぼくがもたついていると、はまっちがすかさず声をかけてくる。

「うえっち、もしかしてそのカメラ使うの、初めてなの?」

「うん、まあ、そうだけど」

「じゃあ、わたしが初体験の相手ね」

「やばいこと言うなよ」

ぼくはどぎまぎして、誰かに聞かれていないかと急いで辺りを見回した。

「ファーストキスの相手も私だったものね」

「…」

ぼくはこことは違うあの遊園地のゴンドラの中のシーンを思い出した。

「そのこと、考えていたでしょ?もううえっちはえっちなんだから、アハハ」

はまっちはさも面白くてたまらないように笑った。

「からかうのも、ほんとたいがいにしてくれよ」

そう言いながらも、まんざらではなかった。はまっちはぼくにとって、他の誰にも変えられないただひとりの女の子だったから。今日、別れるとしても。

「じゃあ、いくよ。はい、チーズ」

はまっちは、ぼくの大好きなひまわりのような笑顔を浮かべた、折りしも吹いてきた強い風に飛びそうになる白いベレー帽を押さえながら。

「ありがとう。今度は一緒に撮ろうよ」

「と言っても、どうしたらいいのかな?」

セルフタイマーを使うにも、三脚などというものは持ってきていない。

「あそこのおばさんに頼んでくる」

はまっちは、すかさず、近くでグループで写真をとっていた中年の女性のひとりに話しかけた。

女性は、人の良さそうな表情を浮かべてぼくの方を見たので、ぼくは軽く会釈した。

カップルなの?若いっていいわね」

ほぼ100%言うんじゃないかと思っていたセリフを女性は言う。

ぼくたちはシンデレラ城の前に立つ。

「さあ、もっとくっついて。せっかくの写真なんだから、大胆にくっついちゃって」

ぼくは恥ずかしがったが、はまっちは距離を詰めて、ぼくの手を握る。

「それぐらいでもいいかしら。初々しくていいわね。さあ、撮りますよ。はい、チーズ」

僕は笑えるかわからなかった。

けれど、シャッターの瞬間、頬に何か触れる感じがして、びっくりした表情になった。

気がつくと、はまっちがぼくのほっぺたにキスしていた。

はまっちの方を見ると、悪戯した子猫のような顔を浮かべている。

「うん、それぐらいでなくっちゃね」

女性は驚きつつも、何だか楽しそうだった。