無意識さんとともに

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催眠!青春!オルタナティヴストーリー 147〜H47 風船

ディズニーランドに着いて、まずしたかったのがシンデレラ城の前で写真を撮ることだった。何よりもうえっちと一緒の写真を撮りたかった。

うえっちは何だかごついカメラを持ってきていた。

手つきが慣れずたどたどしい、それが何だか可愛らしい。

『ああ、自分ってうえっちのこんなところも好きだったんだなあ』

そんなふうに思ってみたりもする。

ちょっとからかってみると、うえっちは顔を真っ赤にして辺りをきょろきょろ見回している。何だか、胸がキュンと締め付けられて、ますます可愛らしく思える。

でも、男の子なんだから、そんなこと思ったら失礼かな。

あのゴンドラの中のことも思い出してしまった。うえっちはずっとずっとわたしの心の中に住んでいる、これからもずっと…そうだ。

人に頼んで、うえっちと一緒の写真を撮ってもらった。

うえっちはぎこちない。わたしは思い切り距離を詰めて、うえっちの手を握り、そして、シャッターが押されるその瞬間に、頬にキスした。

これぐらいしてもいいよね。

近くにいた外国人の男性が、わたしたちを見て口笛を吹いた。

それが何だかうれしかった。うえっちは気づいたのかな。

それから、わたしたちは、まず、プーさんのハニーハントに乗りに行った。

そんなに混んではいなかった。

「そんなに混んでいなくてよかったね」

うえっちは何だかまだぼうっとしているようだった。わたしが魔法にかけてしまったのかな。

「子供連れやカップルばかりだね」

「えっ、そうだね」

「わたしたちもカップルに見られているんだろうね」

「うん」

うえっちはちょっと小さな声で言う。

程なくして、番が回ってくる。

「気をつけてお下がりください」

キャストの人が言う。

これも可愛らしいカートに、ふたりして乗り込む。

「行ってらっしゃいませ」

カートの中はそんなに広くない、自然、わたしはうえっちと体をくっ付けることになる。なんだか、自分の心臓の鼓動だけでなく、うえっちの心臓の鼓動まで聞こえる気がする。

蜂蜜の香りが漂ってくる。

「この蜂蜜の香りって本物なのかな?」

「どうだろうね、本物だったら面白いけど」

「蜂蜜の香りって単純にいい香りって言うんじゃなくて、何だか頭がジンジンする香りだね」

「そうかもしれないね、花から取られているのに、花の匂いとはまた違うね」

どうでもいい会話、けれどどうでもいい会話がとてもとても貴重なものに思えてくる。

プーさんは青い風船を握って森の中を飛びながら進んでいく。

そうやっていつか森を抜けるのだろう。

わたしたちも無意識の風船を手にして、心の森の中を飛んでいる最中なのかもしれない、出口を目指して。