無意識さんとともに

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催眠!青春!オルタナティヴストーリー 158 チューター

高校が始まった。

自転車で10分で通える距離だった。それで、僕はほぼ毎日、放課後、無限塾にやってきて、自習室の教卓のところに座り、小学生や中学生の質問に答える。

小学生や中学生の質問に答えるには、僕も勉強しなければならない。

『1を教えるためには10知る必要がある』とどこかで聞いたような気がするが、どうやら間違っていないようだ。

質問にちゃんと答えられない時もある。そんな時に、自分のプライドを守るために誤魔化したくなる、けれど、そんな気持ちをグッとこらえて、『次までに調べてくるね』と言うのは簡単なことではなかった。

だんだん親しくなると、特に小学生男子とは、廊下で相撲を取ったりして遊んだ。僕自身、自分がこんなことをして遊んだことがなかったので、何だか自分の小学生時代を取り戻すような面白い経験だった。

また、質問だけではなく、いろいろな相談もしてくる。

高1の僕に、そんな相談に答えられるわけもないのだが、僕は親友の心に聞いてみる。

「上地さん、好きな子がいるんだけど、告白した方がいいですか?」

中1の佳菜子ちゃんが言ってくる。

「どんな子なの?」

「いつも机に突っ伏していて眠そうな男子」

「その子のどこが好きなの?」

「何だか、みんなと違っていてユニークな感じ」

「その子とは、よくしゃべるの?」

「席も離れていて、そんなに話したことはないの」

「そうかあ」

僕は、声に出さないで心に聞いてみる。

『心よ、佳菜子ちゃんはその男子に告白した方がいいの?』
『自転車の鍵』

『心よ、どういう意味?』

『自転車の鍵って言えばわかるよ』

「自転車の鍵って意味わかる?」

僕はおそるおそる佳菜子ちゃんに言ってみる。
「自転車の鍵ですか、確かにこないだ自転車の鍵を教室で拾ったんですけど、誰のものかわからなくて」

『心よ、その自転車の鍵をどうしたらいいの?」

『その男の子に尋ねてみる』

佳菜子ちゃんは、次の日、自転車の鍵をその男子に尋ねてみたら、その鍵がその子のもので彼と話せるようになったと、喜んで報告してくれた。

すごいと思ったが、何だか実感がない。僕は心が言っていることを伝えただけだから、実感もないのも無理はないかも知れない。

もちろん、自分のことも心に聞いている。

これどうしたらいいの、あれどうしたらいいのとかそんなことも聞くけれど、一番気になるのは、母親が支配者ということと、やはり、はまっちのことだ。

『心よ、母親が支配者ってどういう意味?』

『まだ、臍の緒がつながってる』

『心よ、どういう意味?』

『自分の人生ではなく、母の人生を生きている』

『心よ、どうやったら自分の人生を生きることができるようになるの?』

『斧でバッサリ臍の緒を断ち切る』

『心よ、どういうこと?』

『怒りの斧で』

『怒りの斧』???

今度ははまっちのことを聞いてみる。

『心よ、いつはまっちと会えるようになるの?』

『臍の緒が切れたら』

ああ、ここでも臍の緒なのか。