無意識さんとともに

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催眠!青春!オルタナティヴストーリー 167 廊下で

ファミレスで、その後も佐伯さんと話し続けたが、何だか話は盛り上がることも深まることもなく終わった。

何だか、核心に触れないで、周りをぐるぐる回っている感じだった。

僕は、その後も、学校と無限塾、そして新たに日曜日は、神楽坂さんの家で午前10時から2時間ぐらい、3人で練習するという毎日を続けた。

1学期のある日、僕は学校の廊下を歩いていた。

その時も、僕は心に話しかけていた。

『今日はびっくりするようなことがあるかもよ』

心はそんなことを言ってくる。

『心よ、それって何?』

『秘密、お楽しみ』

心の顔はどんなものかわからないけど、人差し指を唇に当てて悪戯っぽそうに微笑む姿が目に浮かぶ。

そんなふうに、心との会話に夢中になっていたためなのか、僕は誰かとぶつかった。

当たった感触で女子だとわかった。

「ごめんなさい」

「いえ、こちらこそ」

「いや、あっ、はまっち、じゃなくて、浜崎さん?」

僕の目の前に、はまっちがいた。チャコールグレーのスカートとブレザーを身につけて、一段と大人っぽく見えるが、間違いない。

「…上地君?」

はまっちはまっすぐな瞳で、僕を見つめ返してくる。僕たちの視線はぶつかって、一瞬のためらいの後、相手の瞳にまで届く。

僕たちは、しばらくの間、何も言わなかった、いや、何も言えなかった。

それから…

「同じ学校だったんだ、気づかなかったよ」

催眠に夢中になってたから気づかなかったのか。

「私は、上地君が同じ学校ということは前から知ってたわ」

もしかして、はまっちは僕のためにこの学校を選んだのだろうか?

「いつから?」

「入学式の時から」

どうしようもなく、心がはまっちに惹かれるのを感じてしまう。現在のはまっちの顔を見ながら、小学生の時のはまっちの顔、中学生の時のはまっちの顔を重ねてしまう。

「なんで声をかけてくれなかったの?」

「約束の時がまだ来ていないから」

「そうか…そうだね」

そんな約束にこだわる必要なんて本当にあるのかと思いながら、でも納得せざるを得なかった。

「上地君、ちょっと見ないうちに大人になったのね、ほら」

はまっちは、僕の顔を指した。

「えっ、何?」

「うっすら、ひげが生えている」

あっ、そうか。今日はひげを剃るのを忘れていたんだ。

「浜崎さんは…うん、いや、やめておく」

はまっちは何だか、めりはりのあるスタイルになっていた。それ以上の表現は恥ずかしくて言えない。

「えっ、何?わかった、相変わらず、うえっちはえっちなんだから」

「うえっちって言わないって約束じゃなかった?」

大人っぽくなっても、はまっちははまっちなんだと妙に安心している僕がいた。