「ところで、催眠喚起をしてトランス状態に入り、無意識の種となるメタファーを組み込んだお話をすることを、私はスクリプトまたはインスタントスクリプトと言っています」
「スクリプトは前もって書いておいたものですが、インスタントスクリプトはその場で即興で口から出したものです」
「どんな効果があるんですか?」
「インスタントスクリプトにしても、スクリプトにしても、エネルギーを巡らせて活性化する働きがあります」
「ちょっと抽象的で今ひとつわからないのですが」
「例えて言うと、身体のマッサージとか整体とかありますよね?」
「はい、私も仕事でストレス抱えて肩凝っちゃって、結構、お世話になっています」
「それの心版です」
「と言うと?」
「心のマッサージ、心の整体だと私は思っています」
「はあ、なるほど」
「それで、心のめぐりを良くして、心を本来の状態に戻していきます」
「そうなんですね」
「人によっては、眠たくなったり、ぼうっとしたり、あるいは関係ないこと考えたりしますが」
「そんな状態でも効いているんですか?集中することが必要なんじゃないんですか?」
「身体のマッサージや整体に、集中力は関係ないですよね。同じことです。意識ではなく、無意識の働きですから、自分の意識で集中している、集中していないというのは関係ないんです。そのあたりは、前回言いましたよね?」
「意識して集中しようというのは、無意識をかえって妨げちゃうことになるというアレですね?」
「そうです、そうです」
「インスタントスクリプトとスクリプトはどう違うんでしょうか?」
「そうですね、どちらにしても、ご本人の悩みを聞いて、ご本人と脳のネットワークを繋いで引き出すことが大切です。ただ、インスタントスクリプトはその場で、スクリプトはじっくり後で行いますから、そう、インスタントスクリプトは心のマッサージ、スクリプトはよく考えて調合された心のサプリという感じでしょうか」
「なるほど」
「ただ、どちらにしても、効果はそれだけではないんです。悩みにあった無意識の種となるメタファーが奥深くに埋め込まれて、知らない間に芽を出して成長し、外側からではなく、内側から悩みを解決していきます。それで、いつの間にか、悩みがなくなっていたり、悩みを悩みと感じなくなったり、あるいは、不思議なことですが、ラッキーなことが起こっていたりもするようです」
「対症療法ではなく、根本的な療法だということですね」
「そうだと言えるかもしれません。いずれにしても、なるべく自分の悩みにあったものを、1回だけでなく、10回以上、そしてまた次には、さらには悩みに合わせて新しいスクリプトをまた10回以上と、聞いていくと、心に無意識の色々な種がまかれて、花園のようになっていくのかもしれません」
「何度もというのが大切なんですね」
「そうですね、そこはマッサージや整体と同じですね」