無意識さんとともに

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催眠!青春!オルタナティヴストーリー 174 会話

釘山さんと、窓際の席に向かい合って座り、一番安いシンプルなラーメンを注文する。

ここは高校の目と鼻の先にあるから、うちの高校生が立ち寄ることも多いし、昼にこっそり学校を抜け出して来るものもいる。

けれど、今は、がらんとして僕たち以外は誰もいない。

こうやって、あらためて釘山さんを見ると、何だかリスに似ている気がする。

「そんなにじっと見ないでよ、食べにくいじゃない」

そう言いながらも、前髪を押さえながら、麺を啜り頬張る。

「ごめん、ごめん。ちょっと、リスに似ていると思ってさ」

「リスかあ、彼氏にもそう言われるんだよね」

食べるのをやめて、どこか遠い目をする。

「彼氏いるんだ?」

「そうよ、悪い?」

「いや、悪くないよ。釘山さんならいて当然かも」

「何それ。青春真っ只中の高2なんだから、彼氏のひとりやふたりいても普通よ」

「えっ、ふたりもいるの?」

「馬鹿、いるわけじゃないじゃない。言葉の弾みよ」

「そりゃ、そうだね」

「何だか、こうして話していると、上地君は話しやすいわね」

「そりゃ、どうもありがとう」

「それは素直すぎるかも。話しやすいけど、男性を感じないかも」

「そりゃ、ショックなこと、ずばずば言うなあ」

ふたりで同時に声を出して笑った。

「とりあえず、ラーメン伸びちゃうから片付けましょうか」

「そうだね」

僕たちは、ラーメンを片付けて、大きな仕事を果たしたようにホッと一息ついた。

お店の人の良さそうな大将は、僕たちのところにほうじ茶を持ってきて、それから厨房の奥に引っ込んで行った。そんな感じだから、うちの高校生たちは食べ終わっても長居をしている、儲ける気はそんなにないらしい。

お茶で、口の中に残る油を洗い流すと、僕たちはまた話し出した。

「上地君は、小5から浜崎さんのことをずっと好きでいるのよね?」

直球ストレートをグイッと投げ込んでくる。まっいいか。

「うん、そうだね」

素直が取り柄の僕はそのままに返事をする。

「付き合ったことはないの?」

「あるよ」

「どれぐらい?」

「数ヶ月ぐらい」

「体の関係はなかったの?」

僕は飲んでいたほうじ茶をほとんど吹き出すところだった。

「ないよ、当然。まだ中2だったし」

なんてことを言ってくるんだ、釘山さんは。

「中2でもある人はあるものよ」

「そうなんだ」

「それから、どうしたの?」

「別れた」

「どうして?お互い好きじゃなかったんじゃないの?」

「うん、そうだけど」

僕は、佐伯さんと僕とはまっちのことをかいつまんで話した。

「そりゃ、上地君が悪いわね」

「そうだよね」

「でも、きれいに別れたから、今も終わらない『永遠の初恋』なんだ」

「そうかもしれない」

「羨ましいな」

「そうかな」

「ほら、最初の集まりも、その後も、上地君と浜崎さんの視線が合うたびに、みんな何だか羨ましく思っているのよ、多分ね」

「そうなんだ」