「ところで、FAPというものがあると聞いたのですが」
「FAPというのは、大嶋信頼先生によって考案された日本発のブリーフセラピー(短期療法)です」
「どんな効果があるんですか?」
「ごくごく簡単に言うと、トラウマを除去するトラウマセラピーだと言うことができます」
「スクリプトとはどんなふうに違うのですか?」
「スクリプトは催眠ですよね。そして、大雑把に言えば、FAPも催眠の一種だと言うこともできます。ですが、クライアントに及ぼす効果が違います」
「私自身は、前から、繰り返しになりますが、FAPはトラウマ除去で、スクリプトはエネルギーの活性化だと思ってきました。そして…」
「そして?」
「大嶋先生自身が、『FAPはマイナスをゼロにするもので、催眠(スクリプトなど)はゼロをプラスにするものだ』と言われたのです。そして、先生は、FAPを終えた人を、ご自分の師匠であり催眠の大家である吉本先生の元に送られたそうです」
「なるほど」
「ですから、FAPはトラウマ除去で、スクリプトはエネルギーの活性化だと私が考えてきたことは妥当であったと思うわけです」
「そうだとして、FAPとスクリプトは両方、必要なものですか?」
「そうそう、そこですね。私は、FAPとスクリプトは両輪の輪だと思っています。
FAPでトラウマを取り去っても、トラウマに対する反応は消えない方がいらっしゃるんですね。例えば、人が怖かったり、妄想が起きたりする原因となるトラウマを取り去ったはずなのに、そういう症状が消えない。そういう時に、悩みに合ったスクリプトを使った催眠を受けると、症状が消えたりするんです」
「それはどうしてですか?」
「FAPは原因となるトラウマを扱い、スクリプトを使った催眠はトラウマの反応を扱います。原因が消えても、反応は習性として残ることもあるのではないかと思っています。そこをスクリプトが扱うことができると」
「だから、両輪の輪ということですね」
「そうです。反応が消えない場合、新たなトラウマ探しに躍起になりがちですが、そこはスクリプトを使った催眠で、もうすでになくなったトラウマの反応が消えることがあるのです」
「わかりました。それで、FAPと催眠を組み合わせて使っているんですね」
「そうです、両輪の輪であり、相乗効果を狙っているわけです」