無意識さんとともに

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催眠!青春!オルタナティヴストーリー 184 特別な時間

「えっ?」

「催眠やってるのよ、私も」

「本当?」

「本当に」

もっと聞きたいが、もう昼休みも終わってしまう。

「放課後、時間ある?」

はまっちはちょっと微笑みながら言う。どういう意味の微笑みだろうか?

「もちろん、あるよ」

「じゃあ、街道沿いのファミレスに行かない?」

「いいよ」

「放課後すぐに図書室で待ち合わせね」

「うん」

「じゃあね、その時にね、うえっち」

うえっちと言われて、心臓がぎゅっと掴まれた感じになってしまった。

「その時にね」

はまっちと返したかったのに返せなかった。司書の先生たちが戻ってきた。僕たちは急いで自分たちの教室に戻った。

僕は、午後の授業に集中しようとしたが、何だか胸に火が点ったようでドキドキして集中できなかった。女子の友達は多いけれど、はまっち以外にこんな感覚を感じたことはない。

やはり、はまっちは、自分にとって特別な存在だと思わざるを得なかった。

放課後になると、僕はいの一番で教室を出て、図書室に向かった。

階段を何段もまとめて駆け上がりたい気持ちだったが、むしろ、自分に落ち着いてと言い聞かせて、一段一段踏みしめるようにして上った。

図書室の入り口の脇の白い壁にもたれかかるようにして、女の子が立っていた。

速攻で教室を出たのに、もう来ていることにちょっと驚いた。

「早いね」

「うん、そうね」

はまっちはちょっと頬を赤らめた。

「行こうか」

「うん」

僕たちは連れ立って歩いた、ふたりの距離は近くもなく遠くもなく。

昔、あの道を歩いた時は、はまっちは僕よりちょっと低いぐらいだったが、今は、僕の方がだいぶ高くなっている。

「一緒に歩くのも久しぶりね」

「そうだね、どれぐらいかな?」

「ディズニーランドに行った時以来かも」

「ディズニーかあ」

僕の胸はズキンと痛くなった。

「でも、こうしてまた会えるなんて」

「不思議だね」

僕は、『運命だね』なんていう言葉が真っ先に思い浮かんだが、急いで打ち消して無難な言葉にした。

「そう言えば、今日はちゃんと髭を剃っているのね」

はまっちはちょっとからかうような調子で言った。

「よせよ、廊下ではまっちにぶつかった時はたまたまだよ」

と言ったが、1年前に廊下ではまっちと遭遇した時は、まだ、髭を剃ることに慣れていなかった。今は、もう慣れた、というより、剃らないとどうしようもなくなってしまう。

「もう高2だからね」

はまっちは僕の心を見透かしたような口調で言う。

「そう、もうすぐ17歳だから」

17歳!僕たちは立ち止まって、お互いの瞳を見つめ合った。