無意識さんとともに

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催眠!青春!オルタナティヴストーリー 210 僕の誕生日5

お品書きと書いてある紙を見て驚く。

前菜3種:サーモンのカルパッチョ、ポークパテ、キャロットラペ

スープ:コーンポタージュ

パン:ライ麦パン

メイン:鶏のコンフィ

飲み物:ミルクティー

デザート:柚子のシャーベット

「これって、フレンチのコース⁉︎」

「それほどじゃないんだけどね、がんばっちゃった」

よく見ると、はまっちの目の下にくまがあるような。

「僕のために?」

「そう、うえっちのために」

僕は思わず、抱きつきたい衝動を覚えたが、抑えた。

「こんなの、食べるの、生まれて初めてだよ」

「あまり期待されると困るけどね、まだまだ修行中の身だから」

はまっちは、ローテーブルにフォークとナイフを置いて、またキッチンに戻って行った。

そうして、白い皿を2枚抱えて来て、テーブルの上に置く。

白い皿の上に、緑色のソースのかかったピンク色のサーモン、薄茶色のポークパテ、オレンジ色のキュロットラペが並ぶ。

「うえっち、17歳の誕生日おめでとう」

「ありがとう」

はまっちと僕は、炭酸水の入ったグラスをつき合わせて、乾杯をする。

「さあ、食べて、食べて」

僕はサーモンから食べた。バジルのソースが鼻に抜ける。

「バジルのソースを使っているんだね」

「そう、うえっちが緑色が好きなのを思い出して」

そんなこと言ったことがあっただろうか?はまっちが僕のことを色々知ってくれているのが何だかうれしい。

他の2つにも手をつけた。パテは口の中でほろりと溶け、ラペはちょうどいい酸っぱさ。

「ラペ、そんなに酸っぱくないよ。ちょうどいいよ」

「酸っぱいの苦手でしょ」

「そんなこと言ったことあったっけ?」

「小学校の給食の時、酢の物が出て『酸っぱい、酸っぱい』と大騒ぎだったじゃない?」

「ああ、そうか」

付き合いが長いから、いろいろなところが見られているんだ。

そうして、次にはスープを持ってきた。

コーンの甘味が口いっぱいに広がる。

「このスープ、本当に甘くて美味しいよ」

僕は、コーンスープと言えば、粉末のカップスープしか飲んだことがない。それとは大違いの味。

「これは結構、大変だったのよ」

そうして、ライ麦パンが温められて出てきた。普通のパンよりライ麦パンが好きだ。そんな好みも、はまっちは知っているのだろうか?

「いよいよ、メインの登場。ちょっと待っててね」

そう言って、はまっちはまたキッチンに引っ込んだ。

持って来たのは、香草が添えられている鶏のコンフィ。ナイフで切ろうとすると、皮がパリパリ音を立てる。口に入れると、中はしっとり柔らかい。

何だか、心も体も満たされていく。

「まだまだ、終わらないわ」

最後に、口直しに柚子のシャーベットとミルクティー

僕たちは、ゆっくりと、一口ずつシャーベットを口に運びながら、話に夢中になる。

「教室に桜の花びらが舞い込んで、うえっちの肩と私の髪についたことがあったじゃない?」

「うん、覚えているよ」

「あれ、まだ取ってあるのよ」

はまっちは立ち上がってそれから1枚の本の栞を持ってきた。

栞には桜の花びらが押し花にしてあり、その下にロイヤルブルーのインクで男の子と女の子の絵が描いてある。男の子は女の子の髪に、女の子は男の子の肩に手を伸ばしている。

「これ、僕たち?」

「そうね」

「僕も、あの桜の花びら取ってあるんだ」

「今度、見せてほしいわ」

こんなふうに、僕の17歳の蜂蜜色の誕生日は過ぎて行った。