僕とはまっちの誕生日がやってくる。
この誕生日に、早生まれの僕たちは、ようやく17歳になる。
そう思うと、何だか特別な日であるような気がしてならなくて、でも、今のはまっちとの距離感がちょうどよくて、一体、何を贈ったらいいのか全くわからない。
自分でぐるぐる考えていても、埒が空かないので、心に聞いてみた。
「心よ、僕ははまっちに何を贈りたいの?」
「ふたりの今の心の状態を表すものを」
「心よ、それって具体的にどうしたらいいのかな?」
「絵を描いてみたらいいんじゃない」
例によって軽い調子でいってくる。
絵かあ、小学生の時のような大胆な絵はもちろん描けないし、描くつもりもない。
そして、『ふたりの今の心の状態を表すもの』かあ。
とりあえず、スケッチブックにデッサンを描いてみることにした。
そうして、心に聞きながら描いてみると、思ったより、スルスルと絵が描けた。
下書きを描いて、絵の具で色を塗り、水彩画にして完成した。
さて、誕生日のことをいつ言い出そうかと、放課後、図書室に向かって廊下を歩いていると、はまっちとばったり会った。
「うえっち、何かにやにやしていない?」
「いや、そんなことないよ」
「なんか悪巧み考えているんでしょ」
「そんなはずないじゃないか」
僕は怒ったふりをしてみせた。
「ところで、1月31日空いてる?」
「もちろん空いてるけど、僕も同じこと、はまっちに聞きたかったんだ。1月30日空いてるの?」
「なんだ、同じこと考えていたのね。それでにやにやしてたんだ」
「はまっちもね」
「えっ、私もにやにやしてた?」
「まあね、それはもう十分」
「それで、誕生日会しない?」
「僕も同じこと言おうとしていた」
「えっ、それも。真似っこじゃん」
「真似じゃないよ、偶然だよ」
「じゃあ、2日間連続で誕生会ということになるけど」
「いいんじゃない」
「うえっちはどこでするつもりなの?」
「30日は土曜日だから、とりあえず、9時に東村山駅改札口に集合ってことで。あとはその日のお楽しみで。はまっちは?」
「家でやるつもり。31日日曜日9時に秋津駅に来てくれる?」
「えっ、はまっちの部屋?大丈夫なの、僕たち高2だよ」
僕は顔を赤らめて、つい先ごろはまっちに言われた言葉を、今度は自分で言ってみる。
「変なこと考えていないでしょうね?」
はまっちはアハハと笑いながら言う。
「ないない」
僕は手をブンブンと胸の前で振る。
そんな感じで約束したが、プレゼント以外に30日どんなふうに過ごそうかと、それから、僕は計画を練るのに忙しかった。