無意識さんとともに

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催眠!青春!オルタナティヴストーリー 196 交換プレゼント

「その前に、サッチが作ってくれたケーキをみんなでいただこうかしら」

「そうね」

「じゃあ、切り分けてくれる、サッチ?」

「はい」

はまっちが、赤い苺がのった真っ白なケーキを真っ白なお皿に切り分けていく。

藤堂さんは紅茶をポットから注いでいく。

ひとりひとりの前に、ケーキと紅茶が揃った。

「あらためて、クリスマスおめでとう」

「メリークリスマス」

みんなが笑顔になって、僕はこの笑顔の中に確かに居場所があるのだと、実感した。

ケーキを一口、口に入れると、生クリームがさっと溶けていく。甘すぎないちょうどいい甘さ。マスカットのような香りの紅茶で口の中を洗うと、また、ケーキのフレッシュな味わいがよみがえる。

みんながおおかた食べ終えたのを見て、藤堂さんは言う。

「さて、それでは…」

「交換プレゼント!」

すかさず、はまっちが口を突っ込む。

「プレゼント持ってきてないよ」

「大丈夫、大丈夫。用意してあるから」

用意してあるのを交換して、交換プレゼントになるんだろうかとツッコミを入れたくなったが、そこは黙っておいた。

みな、赤、青、緑、黄でラッピングされた袋をひとつずつ持たされた。

「では、We wish you a merry Christmasの歌を歌って回します」

「最初の部分だけを3回ね」

We wish you a merry Chrismas

We wish you a merry Christmas

We wish you a merry Chirismas

And a happy new year

僕たちは歌っているうちに、調子に乗ってきて、手を叩いたり、体を揺らしたり、果ては何がおかしいのか笑い出したりしていた。

箸を転がしてもおかしい年代というけれど、僕たちは歌を歌ってもおかしい年代なのかもしれない。

そんなふうに思える日がやってくるなんてね、奇跡かもしれない。

僕たちは、回転寿司のレーンにのったお寿司を回すように、プレゼントを回し、3回歌ったところでプレゼントをストップした。

「さあ、プレゼントのお披露目タイムで〜す」

はまっちがふざけながら言う。

僕は、自分のところに来た緑の包みを開けると、パーティグッズ?

禿げたかつらと、鼻がくっついたメガネと、ちょび髭の付け髭が入っていた。

「うえっち、大当たり!じゃあ、つけて、つけて」

「しかたないなあ」

僕がつけると、はまっちは僕の顔を見て笑い転げる、涙まで流して。

「そんなにおかしいの?」

「うん、おかしい。怜ちゃん、福井君、うえっちどう?」

「そうね、とても似合っていると思うわ」

「なんだか、コメディアンみたいですね」

そう言われたら覚悟を決めるしかない、小学校の時、流行っていた一発芸を披露して見せた。

はまっちだけでなく、藤堂さんや福井君まで笑っている。

やった、大成功だ。

「ところで、はまっちは何だったの?」

「私はね、サングラス!」

こちらが何を言わなくても、はまっちはサングラスをかけてモデルみたいなポーズを決めて見せた。

「どう?」

「なんだか、小さい子が大人に見せようとしているみたいで…かわいらしい」

「何それ、失礼ね」

はまっちは頬をぷーっと膨らませたが、ますますかわいらしくなった。

『ほんとは、もう十分、大人に見えるよ』という言葉が心に浮かんだ。

藤堂さんはティアラ、福井君はロビンフッドのつけていそうな帽子と弓が入っていて、それぞれがつけて見せてくれた。

意味はわからないけれど、それぞれにぴったりのものが来たのかもしれない。

まあ、僕のは例外だと思いたいが。