無意識さんとともに

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聖人A 73 処刑

駅の改札口を出て歩く。

延々と続く畑、そして豚小屋の匂い、何も変わることがなかった。

そして、もうすぐ、道を曲がったところに古い一軒家があるはずだ。

そう思って、道を曲がると、そこには何もなかった。

ただの更地になっていた。

更地には、枯れかかった黄色い雑草が生えているだけだった。

僕は、亡霊のようにそこに立ち尽くした。

『神の呪い』という言葉がガクンと腹の底まで降りてきたような気がした。

「神は与え、神はとりたもう。神の名はほむべきかな」、そんなヨブの声が頭の中に響き渡る。

僕は、唯一、今の生き地獄の中から出る手がかりを失ってしまった。

僕の憧れであり、先駆けであるたっちゃんは、もうどこにもいない。

これ以上、どうやって生きればいいのだろうか?

もう、十分ではないだろうか?

孤独が霜柱のように心を侵食する。

「主よ、もう十分です。僕の命をお取りください」

僕は心の中でつぶやいた。

その瞬間、神は僕の祈りに答えたのかどうか、天使が目の前に現れた。

天使の顔は、僕がよく見知った人のように見えて、僕は「やあ」と手を上げた。

『これで僕は孤独から救われる』

そんなことを考えた。

陽はもう暮れかかっていて辺りは薄暗かった。どこからか、芳しい薔薇の香りがする。

『この匂いはどこからだろう?』

そう思って天使を見つめると、僕はそのわけが分かった。

天使は、左手に薔薇、右手に煌めく何かを手にしていた。

天使は微笑んでいたが、僕が見つめている間に、急に厳しい顔つきになって、足早に、そしてついには全力で飛ぶように駆け出して近づいてきた。

「○○○○」

その言葉は『嘘つき』とも『死のさばき』とも『祝福』とも聞こえた。

僕は両腕を広げて、天使を腕に迎え入れようとした。

天使は煌めくものを振り上げ、そっと、しかし、力強く僕の腹に押し込んだ。

赤い薔薇の花びらが当たり一面に舞い上がった。

『救われた』

僕は、そんなふうに思ったのも束の間、何も見えず何も聞こえず何も意識できない闇へと堕ちていった。

計器の信号音、人の声、金属が触れ合う音。

まぶしすぎる光。

上から僕を覗く薄青の服で覆われた人たち。

そんな光景が頭の中に炸裂した後で、また頭はブラックアウトした。

今度は、目を覚ますと、白い天井が見えた。

右手には誰かの手が重ねられている。

体は痺れたように動かなくて、それが誰なのかわからない。

「優君、目を覚ましたのね。もう何日も目を覚まさなかったのよ」

「あなたは誰?」

僕は息がスースー漏れるような声で言った。

「私よ」

「私って?」

「あなたがよく知っている私」