無意識さんとともに

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催眠!青春!オルタナティヴストーリー 199 願い

正月が明けたが、僕は同じような日々を過ごしていた。

学校が始まると、学校の図書館ではまっちと顔を合わせた。

僕たちは、放課後、司書室で何気ない会話をする。

「最近はどうしてる?」

クリスマスからそんなに経ってないのに、はまっちは『最近』という言葉遣いをする。確かに、クリスマスは去年のことで、今は年が明けているのだから、そう言ってもおかしくないのかもしれない。

「バイトに勉強という感じだよ。はまっちは?」

「私もそんな感じかな。もうすぐ、高3だものね」

『高3』という言葉に、多少なりともドキンとする。17歳の7月7日、こうやってはまっちと普通に話せるようになった今は、前ほどこの日にこだわっていないにしても、それでも気にならないといえば嘘になる。

「高3かあ」

「そう言えば、もうすぐ誕生日だよね」

「はまっちもね」

僕たちの誕生日は、はまっちが1月30日、僕が1月31日と連続している。

「あの時、もらった絵、今でも時々見返すわよ」

「そうなの?」

「あの時の私よりも、今の私の方が絵の中の私に近いから」

「そうなんだ」

僕は冷静さを装ったが、どぎまぎせざるを得なかった。

「小学生にしては、ずいぶん、大人びた、大胆なプレゼントよね」

「確かに」

「けれど、いつまでも忘れられないプレゼントだわ」

「僕もはまっちが祝ってくれた誕生日覚えているよ。オムライス作ってくれたんだよね」

「そうね、確か、オムライスにハート書いたのよね」

「あれ見た時、心臓が飛び出そうになったよ」

「そうなの?でも、なんかすごく泣いていたよね」

「やだなあ、覚えているんだ?」

「忘れようったって忘れられないわよ」

「はまっちも泣いていたよね?何で?」

「そうだったっけ?全然、覚えていないわ」

はまっちはとぼけてみせた。

「それで、はまっちはミサンガくれたんだよね?」

「そうそう、それで夢でミサンガを赤ちゃんの足につけて、うえっちには虹色のミサンガ、私には青色のミサンガ…」

「あの時から、そして、こないだ、クリスマスにミサンガをあの小屋の跡に埋めるまで、僕たちの人生ってミサンガに導かれていたみたいだね」

「本当にそう…ところでうえっちは、今、欲しいものある?」

「欲しいものかあ、特にないかな。あえて言えば、この穏やかな日がずっと続いていくことかな。はまっちは?」

「私もそう。ほら、小学生の頃、あんなに普通の何もない平和な日々を望んだでしょ?」

「そうだね、はまっちも僕も」

「それが、今、かなっているなんて、ほんとに不思議な気がするわ」