正月が明けたが、僕は同じような日々を過ごしていた。
学校が始まると、学校の図書館ではまっちと顔を合わせた。
僕たちは、放課後、司書室で何気ない会話をする。
「最近はどうしてる?」
クリスマスからそんなに経ってないのに、はまっちは『最近』という言葉遣いをする。確かに、クリスマスは去年のことで、今は年が明けているのだから、そう言ってもおかしくないのかもしれない。
「バイトに勉強という感じだよ。はまっちは?」
「私もそんな感じかな。もうすぐ、高3だものね」
『高3』という言葉に、多少なりともドキンとする。17歳の7月7日、こうやってはまっちと普通に話せるようになった今は、前ほどこの日にこだわっていないにしても、それでも気にならないといえば嘘になる。
「高3かあ」
「そう言えば、もうすぐ誕生日だよね」
「はまっちもね」
僕たちの誕生日は、はまっちが1月30日、僕が1月31日と連続している。
「あの時、もらった絵、今でも時々見返すわよ」
「そうなの?」
「あの時の私よりも、今の私の方が絵の中の私に近いから」
「そうなんだ」
僕は冷静さを装ったが、どぎまぎせざるを得なかった。
「小学生にしては、ずいぶん、大人びた、大胆なプレゼントよね」
「確かに」
「けれど、いつまでも忘れられないプレゼントだわ」
「僕もはまっちが祝ってくれた誕生日覚えているよ。オムライス作ってくれたんだよね」
「そうね、確か、オムライスにハート書いたのよね」
「あれ見た時、心臓が飛び出そうになったよ」
「そうなの?でも、なんかすごく泣いていたよね」
「やだなあ、覚えているんだ?」
「忘れようったって忘れられないわよ」
「はまっちも泣いていたよね?何で?」
「そうだったっけ?全然、覚えていないわ」
はまっちはとぼけてみせた。
「それで、はまっちはミサンガくれたんだよね?」
「そうそう、それで夢でミサンガを赤ちゃんの足につけて、うえっちには虹色のミサンガ、私には青色のミサンガ…」
「あの時から、そして、こないだ、クリスマスにミサンガをあの小屋の跡に埋めるまで、僕たちの人生ってミサンガに導かれていたみたいだね」
「本当にそう…ところでうえっちは、今、欲しいものある?」
「欲しいものかあ、特にないかな。あえて言えば、この穏やかな日がずっと続いていくことかな。はまっちは?」
「私もそう。ほら、小学生の頃、あんなに普通の何もない平和な日々を望んだでしょ?」
「そうだね、はまっちも僕も」
「それが、今、かなっているなんて、ほんとに不思議な気がするわ」