無意識さんとともに

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黎明〜鬱からの回復 48 親友

けれど、藤堂さんと私は、二人きりの礼拝で毎週、顔を合わせ、その後は一緒に食事をしてお互いのことを包み隠さず話し、そんなことをするたびに、親しくなっていった。

藤堂さんは、いつものあのファミレスの、窓際のあの席で、食後の紅茶を入れた白いカップを持ち上げて一口飲んでから、視線は窓の外のカップルに向かいながら、つぶやくように言う。

「神崎さん、私たち、親友ですよね?」

その言葉は私をどきりとさせた。

けれども、ほとんど誰にも言っていない自分のことを知っている、この人をその言葉以外の何という言葉で言えばいいのだろうか。

「そうだね、親友だね」

言ってしまって、私はフーッと息を吐く。

越えてはいけない境界線を越えてしまったような気がして、微かに胸が痛む。

私は思わず、視線を下に落とす。

光ちゃんのことを考えているんですか?」

この胸の微かな痛みはそういうことなんだろうか?

光のことを考えて、後ろめたい気持ちになっているということなんだろうか?

「わからないよ」

私は顔をあげて、曖昧に笑う。

「大丈夫ですよ、私たち、恋人じゃなくて親友なんですから」

藤堂さんが、『恋人』という言葉を持ち出したことに驚いて、思わずまっすぐ、藤堂さんの瞳を見つめてしまった。

「そう、親友なんだよね」

「そうです」

そう思ってみたものの、何だか、胸の中に澱のようなものがあって、広がっていくようなそんな気がしてならなかった。

冬が近づいた寒い日、地下の駅へと降りるエスカレーターに、私は先に、藤堂さんは後に乗っていった。

「今日は、本当に寒いですね」

藤堂さんは、私の後でそう言う。

その言葉に答えようとした瞬間、私は空いている右手に何だか温かいものを感じた。

振り返ってみると、藤堂さんが私の手を握っているのだった。

また、こんなこともあった。

お正月間近で、カラオケがいっぱいで空室がなく、私たちは夕闇の中、どうしようかと、カラオケの入っているビルの前で立ち尽くしていた。

その日は藤堂さんが用事があって、カラオケ礼拝が午後6時になったと言うのも間が悪かった。

「今日は、やめておこうか?」

おそらく、他のカラオケもいっぱいだろう。今日はやめておく、それが一番、無難な選択かもしれない。

「それは…困ります」

「どうして?」

「どうしても神崎さんに祈ってほしいことがあるんです」

「そうか、じゃあ、公園ででも祈ろうか?」

「凍えちゃいますよ」

「じゃあ、どうしたら?」

「私の家に来ませんか?」

私はひどく戸惑った。けれど、それでも行くことにした。