無意識さんとともに

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催眠の現象学60 FAPストーリー〜母を見送る

FAP上級講座で、私の尊敬するある方にFAPをやっていただきました。

悩みはとにかく中途覚醒が多いことです。

多い時は一晩に8回ぐらい、目が覚めてしまうのです。

もっともすぐに自己催眠でまた眠るので、睡眠アプリのスコアは悪くないのですが。

それでもなんだか、気になってしまうんです。

始めると、自分の顔に硫酸がかかって溶けていくイメージが見えてきました。

顔のところどころに穴が開いて、どんどん溶けていきます。

胃液がこみ上げてくるような、とても気持ち悪い、見ているのが耐えられないような感じです。

 

『私は何でこんな目にあわなくちゃいけないんだろう?』

そんな怒りも腹の底からふつふつと湧き上がってきます。

 

けれど、自分の顔が溶けているのに、それを見ている自分がいるのに気づきました。

すると、溶かされている自分は誰?

ああ、溶かされているのは、母なんだと閃きました。

正確に言うと、自分に張り付いていた母の存在、母の顔…

以前に、あなたには母の顔が張り付いているよと、無意識さんに言われたような。

 

そう思ってみてみると、今度は違う怒りも出てきました。

(母が苦しいから自分も苦しむ怒り)←お相手の言葉

 

そうか、母が苦しいから自分も苦しいなどとは、思ってもみたこともありませんでした。

私は母親を拒絶して、拒絶して、拒絶して…

大袈裟に言えば、母というものをこの世から抹殺したいとさえ思っていたのです。

 

そうして、母との絆を完全に断ち切ったつもりでいたのです。

 

けれども、それもまた、執着であり、一種の絆だったのかもしれません。

私の中の幼な子は、そう思ってもなお、母なるものを必死で求め、泣き叫んでいたのかもしれません。

さらに、硫酸は胴体、腰骨あたりまで溶かしてきます。

(どんどん壊れていく、勝手に壊れる怒り、何でこんなになっちゃうんだろう、自分がこんなふうにしてしまったのかもしれないという怒り)←お相手の言葉

 

硫酸は足まで達し、全ては粉々になって、風に吹き払われていきます。

(粉々、喪失感)

私の母は、去年、コロナで亡くなりました。

けれど、私は今までの経緯で解放感を感じさえすれ、墓地で不覚にも涙をこぼしさえすれ、『喪失感』などは味わったことはありませんでした。

 

『喪失感』、これを味わって、母は本当に風に吹き払われて消えていきます。

母との思い出は苦しいもの、悲しいもの、痛むものしかありませんでしたが、『喪失感』を味わった今は、そんな思い出も貝殻の中の真珠のようなものに変わっていくのでしょうか?

私の中の幼な子も、外に向かった腕を下ろして、無意識さんに抱かれているのに気づいて、無意識さんこそが自分の母であり、ふるさとであると知って、すやすやと寝息を立てているのかもしれません。

Yさん、本当にありがとうございました。