無意識さんとともに

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黎明〜鬱からの回復

黎明〜鬱からの回復 14 対決

黒スーツで黒メガネの牧師は説教を始めた。 「今日の聖書の箇所で、主イエスの兄弟やコブは言っています。 『主に義とされる(正しいものと認められる)のは、信仰だけではなく行ないにもよるのだ』と。 この教会は、先先代の牧師によって、信仰による義を重…

黎明〜鬱からの回復 13 悪目立ち?

「おはようございます、神崎兄弟」 あちらこちらから声がかかる。そのたびに、私は光を教会の人たちに紹介する。 私は光が受け入れられないんじゃないかと思っていたが、そんな予想とは違って、年輩の人たちは孫でも見るかのように目を細めて手を差し出し、…

黎明〜鬱からの回復 12 途上

(これはフィクションです。登場人物など現実のものとは関わりがありません。) 東京駅から中央線の快速に乗って7駅ほどの駅で降りる。 駅前は若者たちでごった返している。 カップルも手を繋いで日曜日のデートを楽しんでいる。 何だか、私たちもクリスチ…

黎明〜鬱からの回復 11 予感

(これはフィクションです。登場人物など現実のものとは関わりがありません。) 私たちはそんなふうにして、何とかして色々なことを祈って誤魔化しながら、付き合いを続けていた。 時々、光が東京の私の教会に来ることもあった。 「ともちゃんの教会にも行っ…

黎明〜鬱からの回復 10 導火線

(これはフィクションです。登場人物など現実のものとは関わりがありません。) 光は目を閉じた。私は、光の唇にそっと口付けた。 それから、私たちはカラオケで会うたびにキスをした。キスはだんだんと激しいものになっていったが、もちろんそれ以上のこと…

黎明〜鬱からの回復 9 カラオケにて

(これはフィクションです。登場人物など現実のものとは関わりがありません。) 私がバランスを欠いているように、光もバランスを欠いているように思えた。 体は大人の女性、心は思春期に入りたての少女のようだった。 私たちは毎日のように電話をし、1ヶ月…

黎明〜鬱からの回復 8 自動販売機

(これはフィクションです。登場人物など現実のものとは関わりがありません。) 付き合うことになったが、世間一般のものからすればずいぶんと歪なものだった。 クリスチャンとノンクリスチャン(キリスト教の信仰を持っていないものを教会ではこう呼んだ)…

黎明〜鬱からの回復 7 ちぐはぐな共同幻想

(これはフィクションです。登場人物など現実のものとは関わりがありません。) 私は泣きながらも、祈り始めた。 「イエス様、光さんは小さな頃、クオヴァディスの漫画でクリスチャンが吊るされるシーンを見て、この世界は恐ろしいところだと心に傷を受けま…

黎明〜鬱からの回復 6 共鳴

(これはフィクションです。登場人物など現実のものとは関わりがありません。) 祈ってもらったところで、いつもと同じように一瞬の高揚はあるが、長続きはしない。 母の爆弾は、私の心に投げ込まれ続ける。 けれど、そうして、落ち込むたびに、最初はためら…

黎明〜鬱からの回復 5 祈り

すぐにメールは返ってきた。 「智昭兄弟 わかりました。あなたのために神様にお祈りします。 携帯電話の番号をいきなり尋ねるのも失礼かと思いますが、教えていただけるでしょうか? というのも、時間を決めて、電話越しにお祈りしたいのです。 主の御名はほ…

黎明〜鬱からの回復 4 メール

しばらくして、メールボックスを覗いてみると、勧誘やら宣伝やらのメールに紛れ込んで、見知らぬ名前の1通のメールが入っていた。 タイトルに、大江光ですとある。 開けてみると、私の祈りの依頼に答えて来たものだった。 「神様の御名を賛美します。 私は…

黎明〜鬱からの回復 3 嫉妬

私が指名された瞬間、光は思い切り、私に肘を食らわした。 「痛い、何をするんだよ」 思わず、声をあげていた。 「ともちゃん(智昭だからそう呼ばれていた)ばかり!」 それだけのやり取りだったが、気がつくと、周りの人たちに注目されている。 ほとんどの…

黎明〜鬱からの回復 2 回想1

(これはフィクションです) お風呂にはもう半月入っていない。 最初は全身が痒くなったが、慣れてしまえばもう何も感じない。 ドアを開けた時に昼間だと分かったが、カーテンを開けるつもりはなく、部屋の蛍光灯をつける。 万年布団の脇に置かれた、これも…

黎明〜鬱からの回復 1 地獄

(これはすべてフィクションであることをお断りしておきます) ボタボタポタ… お風呂の水道の蛇口がちゃんと締めていないのか、水がバスタブに落下する音がえんえんと聞こえる。 立ち上がって締めにいかなければならないことはわかってる… しかし、その気力…