そうして、パーツセラピーを続けていたんです。
様々な防御パーツと親しみ、また自分がセルフでいる状態も少しずつ長くなり、パーツ同士の関係も改善されて、自分自身の内圧が下がってからだも心もゆるんでいるような感じになっていました。
そんなところで、ついにあれが現れたんです。
あれって何かというと、エグザイル(追放者、インナーチャイルド)です。
最初のきっかけは、左胸にいる心配症のパーツであるアリスさんに尋ねた問いでした。
「あなたは誰を守っているのですか?」
「0歳の赤ちゃんよ」
すると、私は喉のところに0歳の自分がいることを感じました。
エグザイルは、IFSが扱えるセラピストに見てもらって扱うのが大切です(これを読んでいる皆さんは原則を守ってください)。
けれど、私の場合は、自然に出てきてしまったので、どうしようもなく、自分でこの0歳児のエグザイルを扱うことになりました。
…
ベビーベッドに赤ちゃんが眠っています。
赤ちゃんは大声で泣いています。
けれど、周りには母も誰もいないんです。
放置されているようです。
私は、近寄って、苦しそうに嗚咽している赤ちゃんを抱き上げました。
私の腕の中で、赤ちゃんは身をよじります。
その動きを不思議にもリアルに感じます。
私は、妹の子供のオムツを取り替えたことがあったので、この赤ちゃんのオムツを取り替えようとします。
案の定、オムツは濡れていました。
オムツを取り替えると、赤ちゃんは大きく息をしてちょっと楽になったようです。
そうして、自分の指をチューチュー吸い始めます。
『お腹がすいているのかもしれない』
私はそう思って辺りを見回すと、テーブルに哺乳瓶と粉ミルクが置いてありました。
ミルクをつくり、人肌の温度になるまで冷ましてから、赤ちゃんをベッドから抱き上げてミルクを飲ませます。
『ああ、私は母乳ではなく、粉ミルクで育ったんだったな』
そんなことを思いながら、ちょっとためらいがちに哺乳瓶を咥えさせると、赤ちゃんはそんな私の思いをかき消すように、力強くミルクを吸い込みます。
赤ちゃんの温もりと、ミルクがからだに吸い込まれていく振動を自分のからだにも感じながら、私の心も何だかいい知れない満足感が満たされていきます。
0歳児の私はミルクを飲み切ってしまうと、眠そうにあくびをします。
私が抱きながらちょっとからだを揺らしていると、静かな寝息を立てて眠ります。
私は、そんな0歳児の私を見て、切ないような、でもうれしいような不思議な気持ちが込み上げてくるのです。
そんな赤ちゃんをしばらく眺めて、そっとベビーベッドに横たえ、私は今あるところに戻ります。
翌日になると、また、0歳児の私に会いにいく、そんなことを繰り返すうちに、赤ちゃんが何だか、どんどんと力強く、命に溢れていくのを感じるんです。