それから、私はその著者の本を次から次へと読んだ。
Amazonのおすすめに出てくるものに従って読んだが、最初、呪文とか遺伝子コードについて書いてあるものは読んでも頭に入らず、著者の言っている通り、唱えてみても何かが変わっている実感が持てなかった。
そうして、また出会ったのが、『支配されちゃう人たち』だった。
この本は、私にとって衝撃だった。
まず、この世に、支配者、虚無、光の人という3タイプの人がいるということ。
私は、この時点でもなお、キリスト教の影響を色濃く受けていたから、そんな3タイプの人がいるなんて思いもよらなかった。
ただ、1種類の人がいるだけで、どんな人も究極的には善を求めており、話し合えばわかると思い込んでいた。
ところが、3種類の人がいて、それぞれは役割も、働きも、何を幸せと感じるかも全く違う。
読んでいて信じられないという気持ちがもたげてきたが、この著者もキリスト教の背景があるということ、そして、『催眠ガール』のスクリプトで感じたものが、本を閉じることを思いとどまらせた。
そうして、何よりも、支配者というタイプ!
自分がいろいろと苦しんできたのは自分のせいであり、自分がおかしいからだとずっと自分を追い込んできたが、もしかしたら、支配者のせいなのかもしれないと思い当たった。
支配者という言葉を聞いて、頭の中には、何人かの顔が明滅した。
さらに読み進めると、『心に聞くこと』という項目があった。
心に聞くためには、まず、心に支配と邪魔の排除をお願いすることが必要だという。
心に聞く?
抵抗感が自分の中に浮かび上がるのを感じた。
聖書には、『人の心は陰険で、それは何よりも直らない』とある。
そんな心に聞くなんて、意味があるのか?
余計、苦しみの中に絡め取られていくだけではないのか?
そう思ったが、同時に、『もしかしたら、こういう思いこそが支配者というものに入れられている思いかもしれない』ということが閃いた。
さあ、どうする…
やってみないとわからない。一歩を踏み出すしかない。
以前よりは片付いたが、それでも乱雑な部屋の中で、私はひとりつぶやいた。
「心よ、支配と邪魔はありますか?」
何も聞こえない。何だか、自分がひどく馬鹿馬鹿しいことをしている気がする。
それでも…
「心よ、支配と邪魔はありますか?」
私はこの言葉を繰り返した。
「ある」
細く小さな声が、自分の内奥から聞こえる気がした。
「心よ、支配と邪魔をしているのは誰ですか?」
すると、次の瞬間、母親の顔が浮かんだ。
「心よ、母親からの支配と邪魔を排除してください。
心よ、支配と邪魔を排除したら教えてください」
何の返事もなかった。
私はひどく落胆して、ずっと干したことのない湿った布団で、その夜も眠った。