「この世はみんな敵ばかり」という思いを身体の中に探ってみる。
すると、首から背中にかけて凝りというか重苦しさを感じる。
しばらく、この感じとともにじっと一緒にいてみる。
…
「こんにちは」
「おやおや、私のことなんてあなたは忘れているものとばかり思っていましたよ」
「今朝、夢に見たので、あなたのことを扱ってみようと思ったんです」
「そうですか、今までずっと待ってきたんですがね。まあ、一応はありがたい」
(皮肉というか、敵意というか、感じる)
「あなた自身は、今、自分自身、どんな感じを持っているんですか?」
「自分は誰にも嫌われて当然という感じ、あなたにさえ、真っ黒でゴミのような」
「誰にも私にも嫌われて当然、真っ黒でゴミのような、感じなんですね」
「そう…ほうきではかれて…ちりとりで集められて捨てられる…ちりの一粒」
「捨てられるちりの一粒のような」
「みんなに足で踏みつけられてきた」
「みんなに踏みつけられてきた…このちりの一粒はどんなことを感じているんですか」
「みんな滅びればいい…自分も含めて…みんな」
「自分も含めて、みんな滅びればいいと思っているんですね」
「そう」
「みんな滅びちゃったら、スカッとするんですか」
「そう…スカッとする…でも待てよ、そうでもない、何だか喉につかえているような」
「喉につかえているような」
「悲しくて、寂しいような」
「悲しくて寂しい、何がそう思わせるのかな」
「まだ、ちりになる前…ちりになる前の私」
「ちりになる前のあなた?」
「消しゴムだったんです」
「どんな消しゴム?」
「真っ白な消しゴム」
「うん」
「それで、ある女の子が…私を優しく大切に使ってくれて」
「その子が優しく大切にあなたを使ってくれたんだね」
「その記憶があるから…みんなが滅びたら…その子も滅びたら…寂しく、悲しい」
「そう…今、あなたはどんな感じがしますか?」
「胸が震えているような…こんな自分はただのゴミだと思ってたけど…あの記憶がゴミだとしか思えない自分の心臓の中に…あるような…自分もみんなも否定しきれないような」
「そう」
(ぶるぶるが大きくなって、顔を伏せているような)
「こんなはずじゃない、こんなはずじゃない、僕は真っ黒にもなれない」
「真っ黒にもなれない」
「そう、真っ黒にもなれない…真っ白にもなれない」
「真っ黒にも真っ白にもなりきれない」
「そう、どちらにもなりきれないんだ」
「ああ」
「忘れてた、今、あなたに、こんにちはと言うよ」
「こんにちは」
「こんにちは」