無意識さんとともに

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パーツセラピー(IFS)について13〜7歳児の呪い⑶

あのアパートの部屋とは、7歳の私と妹が置き去りにされたあそこです。
少年は、畳をしきりにむしっています。

何だか、目がギラギラしています。

おずおずと話しかけました。

「こんにちは」

少年は、チッと言っただけで、何も答えません。

ただ、こちらを正面から見据えています。

懲りずに話しかけてみます。

「何をしているの?」

それでも何も答えません。でも、いよいよ、私の顔をじっと見つめます。

そうして、何分も過ぎていきます。

ついに、何か破裂したかのように、言葉を発します。

「見りゃわかるだろ」
私は、少年の怒気を含んだ声に、ちょっとひるみます。それで、しばらく何の言葉を発することもできません。

「見りゃわかるだろって言ったんだ、聞こえてないの?」


「聞こえてるよ」
なんか喉がカラカラになるのを感じて、ようやく返事をします。
「だったら、聞けよ」
さらに、少年の怒りは燃え盛るように感じられます。
「お父さんは出て行った。お母さんもあとを追って出て行った。みんな僕を見捨てた」

少年の中の火山が爆発しているみたいです。

「僕と妹はここでどうなるかわからない。昼間は怖い人がドアをどんどん叩いてくる。妹はなくばかり。お父さんとお母さんはどこに行ったのというけれど、答えられない」
少年は震えながら、息を切りながら、叫ぶように言います。
「みんな見捨てたんだ、お父さんも、お母さんも、みんな」
「お父さんも、お母さんも、嫌いだ。みんな嫌いだ、こんな世界も嫌いだ」
「憎い、憎い、憎い。お父さんもお母さんも、みんな死んじまえ。こんな世界滅びちまえ」

少年はあらん限りの声で叫びます。ブルブル全身が震えています。

思わず、私はどうしていいかわからず、けれど、何を思ったか少年を抱きしめます。
少年はものすごい力で抵抗します。
それだけでなく、私の肩を全力で叩きます。
そして、なおも、父と母と世界に対する呪いの言葉を吐き続けます。
何だか、痛い、痛い、痛い。痛くてたまりません。

「僕も嫌いだ、僕も憎い、僕なんかいなくなれ、僕も滅びちまえ」
少年は、今度は、自分を呪い始めます。
それを聞いていると、私はどうしようもなくなり、目から涙がふきだし始め、嗚咽するしかなくなります。

そうやって、どれぐらい経ったことでしょう。

「おじちゃんは、なんで泣いているの?」
先ほどの声とまるで違う声で、少年は心配そうに話しかけてきます。
「大丈夫だよ」
「うん」
「君の中のすべてをどこに吐き出そうか?」
「土の中」
少年はポツリと答えます。
私は少年を連れ出して、近くの空き地で穴を掘ります。
少年はその穴に、内臓が全部出てしまうんじゃないかと思うぐらい、吐き出しました。
私と少年は、一緒に、その上に土をかぶせました。

「少年のしたいことを聞いてあげてください」

イメージの中に没頭していた私にカウンセラーの声が急に入ってきます。
「君はしたいことある?」