無意識さんとともに

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2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 127〜U36 ニアミス

チカチカ点滅する玄関の蛍光灯に照らされて、佐伯さんの顔は青白く見える。 家の中は真っ暗だ。 「家の人は?」 「誰もいない」 「誰もいないってどういうこと?」 「…」 ぼくは聞いてはいけないことを聞いてしまったことに気づいた。 「お父さんはもういな…

聖人A 4 献身

僕は自ら、牧師か伝道者になろうと思った。 それから、しばらくして、教会に有名な伝道者がやってきた。 日曜日の午後に、伝道会(教会に来たことのない人を招いて、回心者を募る会)をすると言う。 さすがに、妹は家に帰り、祖母がその間、面倒をみることに…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 126〜H36 計画

帰り道、怜のパパの車に乗りながら、わたしは今日のことを考えていた。 うえっちは、わたしの告白にすぐには返事をしてくれなかった。あの時、浮かべていた苦しげな表情が頭を離れない。 そして、教室に着いた時、うえっちはわたしの手を振り解いた。それか…

聖人A 3 夢?

牧師先生は、アメリカ留学中にクリスチャンになったという人で、黒縁眼鏡にやせぎすでいつも黒のスーツを着ていた。ただ肩幅は広かった。何でも、柔道をやっていたらしい。 牧師先生が激したことはほとんど見たことがない。 奥様は何でも大学でピアノを教え…

キャラ愛

小説を書きたいという気持ちはずっとあったが、プロの小説家の作品を見るたびに、『私のようなものが書いていいんだろうか』という気持ちになっていた。 何というか、文章の解像度がまるで違うのである。プロの作品が1000万画素だとしたら、私の書けるものは…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 125〜U35 ジグザグ

ぼくは耳を疑った。 はまっちは何て言ったのだろう? 確か、付き合ってくださいと。 はまっちは念を押すように、もう一度言った。 「うえっち、わたしと付き合ってください」 もちろん、YESに決まっている。はまっちはぼくの理想の女の子だ。でも、どうして…

聖人A 2 祈祷会

もう、赤ちゃんの頃から、教会には週に2回は通っていた。 水曜日に祈祷会(お祈りのための集まり)があり、日曜日には、礼拝の前に子供のための日曜学校があり、その後、礼拝がある。 祈祷会は、ほぼ大人しかいないのだが、母は僕と妹を連れて行った。 大人…

新しい小説について

「聖人A」という小説を書き始めた。 主人公はクリスチャン2世で、母子家庭育ち。私は、元クリスチャン1世で、母子家庭育ちではない。 だから、フィクションなのだが、それにしても、何だか胸の中の開かずの間が開かれるようで、怖くも痛くもある。 無意識さ…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 124〜H35 退行

「えっ」 うえっちは、あげかけた腰をまた席におろした。何で、わたしはこんな不意打ちのように、こんな大切な言葉を言ってしまったんだろう。 『その答えは、もう自分でわかっているじゃない』 そう、わたしは、もううえっちを誰にも取られたくないのだ。 …

聖人A 1 クリスチャンホーム

地獄への道は善意で舗装されている 1 僕は、プロテスタントキリスト教の家庭に生まれた。いわゆるクリスチャンホームというやつだ。今、流行りの宗教2世というわけである。 もっとも、僕の信じているのは、正統派中の正統派を自認する福音派と呼ばれるプロ…

エリクソンの生涯の秘訣

「…すなわち彼の人生は、自らの身体障害と闘い続けた一生であった。それらを彼は、主に自己催眠によって独力で乗り越え、また自己管理していたのである。」 (「ミルトン・エリクソン入門」オハンロン 訳者の後書きより) この頃、自己催眠の重要性を感じる…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 123〜U34 心模様

はまっちと会う約束の日が明日だというのに、ぼくは佐伯さんのことばかり考えていた。 佐伯さんのことが好きかと聞かれれば、おそらくそうではないだろう。それでも、考えることがやめられない。 『優しさほど人を傷つけるものはない』、そう言われれば返す…

あなたは人を救いたいんですか?

「あなたは人を救いたいんですか?」 そう聞かれてどきりとした。 簡単にYESともNOとも言えない気がした。 私もヒーローになりたかった。ヒーローになって多くの人を救いたかった。 小さな頃のヒーローとは、ウルトラセブンのような正義のヒーローのことだっ…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 122〜H34 はまっちの告白

うえっちと一緒に、新青梅街道沿いにあるファミレスに入った。 舌を出したあの人形がお出迎えしてくれる。 係の人に「お好きな咳にどうぞ」と言われて、「あそこの席がいいよ」とわたしをエスコートしてくれる。 『もしかして、このファミレスに来慣れている…

無意識の起動は奇跡を起こす?

無意識を起動するってとても大切なことらしい。 ここのところ、頭痛に悩まされていた。いろいろやってみてもよくならない。 『新年早々から頭痛なんて、何だかついてないなあ』と思って、我と我が身を嘆いていた。今日は出かける予定があるので、最後の手段…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 121〜U33 優しさ

あれから、佐伯さんは部室に寄り付かなくなった、それまでほぼ毎日、お昼休みも放課後もいたというのに。歩道橋で別れた時の最後の言葉が耳を離れない。 ぼく以外の二人の女子は、佐伯さんがいなくなったことに特に興味を示していない。ただ、淡々と彼女らの…

ふてぶてしくなる

ちょっとしたことでも、赤面してしまう人間だった。 中学校の時、朝礼で、先生が「誰かが理科実験室の備品が壊された。やったものがいたら、正直に言いに来なさい」と言うと、 自分がやったわけではないのに、赤面してしまう。 さらに、『こんなに赤面してい…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 120〜H33 途中

秋津駅から電車に乗った、所沢駅で西武新宿線に乗り換えて、西武新宿駅行きの電車に乗る。 『バスに乗った方が近かったかな』、そう思いつつも考えを巡らす時間ができて、これで良かったのかもしれないと思う。 こないだの塾の時から、もう頭の中は、前より…