無意識さんとともに

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2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 137〜H 42 転回

1階の書斎に、わたしはお邪魔させていただいている。 大きなマホガニーのテーブルがあって、怜のパパは、白いレースのカーテンのかかる大きな窓を背にして、革製の黒い高い背もたれのある椅子に座っている。 怜が静かに入ってきて、氷の入ったルイボスティ…

聖人A 14 転落

僕は、皆の前で罪を告白した。 『勇気ある立派な行いだよ』とか『主があなたを赦してくださったのだから、あなたを責めることができるものは誰もいないよ』とか言ってくれたが、 それから、皆が僕を見る目は明らかに変わった。 それまで、僕は、牧師・伝道者…

無意識さんに直結する

最初は、人から癒しを受けようとすることは仕方ないし、当然のことである。 溺れるものは藁をも掴むのだろう。 けれど、人から得ているだけなら、いつまで経っても、相手に依存し続けなければならない。 エリクソンの使った催眠は、古典的な催眠のように、術…

無意識の活性化2〜スクリプト

無意識を活性化するには、スクリプトを聞くことが有効だ。 もちろん、人から催眠導入してもらってスクリプトを語ってもらえば、強力だが、毎日できることではない。 ネット上にある吉本雄史先生のスクリプト(「吉本雄史 スクリプト」で検索すると出てくる)…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 136〜U41 距離感

ぼくは部長だから、文芸部の活動に出ざるを得なかった。 佐伯さんとあれから会っていないが、いつまた顔を会わせることになるのかと思うと、胃がしくしくした。 『共依存』、神楽坂さんに言われた言葉が脳裏を離れなかった。 ぼくは、佐伯さんとはまっちの間…

聖人A 13 公開処刑

礼拝の時だった。 牧師の説教が終わると、たっちゃんは立ち上がって預言を始める。 公民館のそれほど大きくない部屋でパイプ椅子に座っている僕らをぐるっと見回す。 「神は侮られるようなお方ではありません。神はあなた方の思いをすみずみまで知っておられ…

人間であることに罪悪感

かつての私は、自分が人間であることに罪悪感を覚えていたのかもしれない。 排泄、性的なこと、眠ること、食べること、感情を表すこと、お金を必要とすること…それらひとつひとつに言い知れない恥ずかしさを覚えて、そういう自分が醜いものに思われてたまら…

卒業

今、「聖人A」という小説を書いているが、なかなかしんどい思いをしている。 主人公の設定は明らかに私自身とは異なっているし、主人公が経験していることも私の人生とはほぼ重ならないが、それでもキリスト教38年によって傷ついた自分のトラウマが反映して…

聖人A 12 二重の混乱

僕たちの教会は、福音派の〇〇神学校の開拓協会として建てられた。そして、初代牧師は、現在、◯◯神学校の校長である。 だから、『しるしや不思議は使徒たちの時代に終わった』という教理から逸脱した教会の現状を許すことなどあり得なかった。 教会を出てい…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 135〜H 41 喪

あの更地となってしまった小屋を見た後、わたしはどうやって帰ったかも覚えていない。 それほど、衝撃的なことだった。 この世界でわたしとうえっちをつなぐただひとつの場所が失われてしまったのだから。 あそこには、わたしの人生の最良の思い出があった。…

宗教という支配

宗教の本質は、支配である。 もちろん、そういう支配から免れたものもあるけれども、それならそれで、そこには巻き込んで自分の一部に取り込もうとする支配者とその支配と常に闘うことになる。 私の尊敬するH神父も、常に同じカトリックの中から批判され、非…

聖人A 11 洗礼

それからは、ぼくたちの教会はまるで変わってしまった、何もかも。 たっちゃんは、朝の祈り会をそれからも続けた。 けれど、違うのは、元々、来ていた日曜学校の小学6年生に加えて、大人が大挙して来るようになった。 たっちゃんはいよいよ、何か触れること…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 134〜U40 レクイエム

「今、はまっちとつきあっています」 ぼくは、神楽坂さんにそのことを言う機会はなかった。 「そうか、おめでとう、よかったな」 「はい、ありがとうございます」 窓から入ってくる陽の光で、神楽坂さんのメガネのフレームがきらりと光る。 「おめでたい話な…

無意識の活性化1〜瞑想

瞑想を始めて6年ぐらいだろうか。 瞑想をする前は、まだキリスト教の中にいたので、座禅と祈りの中間みたいなイエスの祈りというのをずっとしていた。 そして、マインドフルネス瞑想に行き着き、ヴィッパサナー瞑想とかサマタ瞑想とか慈悲の瞑想とかやって…

聖人A 10 狂宴

たっちゃんが『COME HOLY SPIRIT!(聖霊よ、来てください)』と叫んだ後、一瞬の静けさがあった。その静けさの後、会堂内はどよめきが起こった。 泣き叫ぶ者、体を震わしている者、異言(通常の人間の言葉とは違う天使が語るとされる言葉)を語るもの、中に…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 133〜U39 共依存

はまっちに会う前日の土曜日、ぼくは、お決まりの場所とは違う東村山駅近くのファミレスで、神楽坂さんと会う約束をした。 誰かに今の自分の現状を聞いてもらいたかったのだ。 自転車で市民センターの中を通り、約束の場所に向かう。 もうすっかり秋になって…

無意識の活性化〜プロローグ

『何で、難治性鬱がそんな短期間で良くなったんですか?』と聞かれることが、結構ある。 それはFAPのおかげだとしか言いようがない。 そうすると、続けて、尋ねられるのは、 『FAPを受けても長くかかる人もいますよね。FAPを受ける以外に何をしていたのか、…

聖人A 9 預言者誕生

たっちゃんは僕の心を読めるんだ。 僕は恐ろしくなって、震えた。 けれど、頭の片隅では、『あんなにぼうっとした、暗唱聖句さえひとつも覚えられない、頭の悪い子がどうなってんだ』という気持ちがまだあった。 「優…」 たっちゃんに名前で、しかも下の名前…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 132〜H40 パラダイスロスト

授業が終わったところで、わたしはうえっちに言った。 「今度の日曜日、空いてる?」 「あっ、うん」 うえっちはやっぱりすごく疲れていそうだ。 「大丈夫、うえっち?」 「ああ、大丈夫だよ、日曜日ね」 もう、塾の教室には誰もいない。ふたりの声だけ、室…

聖人A 8 現象

たっちゃんは、朝6時に教会に来てお祈り会を開くようになった。 来るのは、僕を含めて子供は4、5人に、ふだん、『リバイバル』と口癖にしている大人がふたりに牧師。 もっとも、大人は見守るようにして、口は出さないつもりらしかった。神様がどんなこと…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 131〜U38 涙の味

塾の教室に入ると、もうはまっちがいた。 はまっちは何だか楽しそうだった。 「はまっち、どうしたの?何だか楽しそうだね」 ぼくは力を振り絞って尋ねた。 「まあね、後のお楽しみ」 『後のお楽しみって何だろう?』、ぼくの頭の中で、はまっちの元気な顔と…

悔い改めと内省の違い

『人を殺さば』 八木重吉 「ぐさり!と やってみたし 人を殺さば こころよからん」 (詩集「秋の瞳」より) キリスト教の罪の悔い改めと内省は違う。 罪の悔い改めとはメタノイア(向きを変えること)と呼ばれる。 人間中心の生き方から神中心の生き方に変わ…

聖人A 7 始まり

小学6年生だったと思う。 教会学校の小6のクラスで、僕たちは教会堂の2階の畳の部屋に集まっていた。 来ているのは、6、7人。 ほとんどクリスチャンホームの子ばかりで、少しだけ一般の家の子も混ざっていた。 田中先生という男子大学生と吉田先生とい…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 130〜H39 お弁当

塾の授業は、1日に2コマある。 そして、その間に、休憩時間が20分あって、簡単な夕食を取る者はとる。大抵の人はコンビニのサンドウィッチなどをかじっていたが、お弁当を持ってくるものもいた。 休憩時間になった時、わたしは、右手で隣にいる疲れて目に…

トランスに入る

催眠感受性というものがあると言われている。 つまり、催眠にかかりやすい人とそうでない人がいるという考え方である。 この考え方は、主に、古典的な催眠でなされている。 しかし、エリクソンは、全ての人がトランスに入るリソースと能力があると考えた。 …

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 129〜U37 プロラクチン

次の日、学校に行ってみたが、佐伯さんは学校に来ていない、佐伯さんのクラスにも文芸部の部室にも姿を見せない。 昨夜会った佐伯さんの姿が頭にこびりついて離れない。 まるで、抜け殻のようだった。佐伯さんの残骸がそこにあるようだった。 『ぼくが佐伯さ…

聖人A 6 喪失

僕がそんなふうになる前は、まだ、神様というものを感じていた。 特に、幼い頃は、神様というのはもうひとりの僕のような存在で、ご飯を食べる時は一緒にご飯を食べ、眠る時は一緒に眠り、遊ぶ時は一緒に遊んでくれる、そんな存在だった。 だから、幼い僕の…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 128〜H38 チグハグ

今日は開校記念日で、学校はお休みだった。 けれど、塾の授業はある。今日は植木さんの英語の授業。 わたしは、午後2時頃に行動を開始した。 まず、買い物、近所のスーパーで、合い挽き肉やらミニトマトやらを仕入れてきた。 母はパートの仕事に出掛けてい…

聖人A 5 ファリサイ人

その有名な伝道者は、僕を前に招いて、頭に手を置いて祈ってくれた。 「主よ、この子はまだ子どもなのに、我と我が身をあなたにお捧げする決心をいたしました。どうぞ、その貴重な決心を受け入れ、あなたの恵みを降り注ぎ、この子をあなたの御言葉を伝える伝…

私の物語

人間とは、「理性ある動物だ」とか「考える葦」だとか、人間の定義はいろいろある。 けれども、私は、「人間とは物語を語るものだ」と思う。 人間は、ただ、毎日を生きているのではない。 人間があるところ、必ず、物語がある。 だから、古事記でも聖書でも…