日曜日、午前8時に、ぼくとはまっちは秋津駅で待ち合わせた。
秋もいよいよ本番の装いを見せて、街路樹も赤や黄に染まっていた。
ぼくが電車から降りて改札口に近づくと、はまっちはすでに改札口のところで待っていた。
白いベレー帽を被り、デニムのジャケットに中は白いシャツ、茶色のロングスカート、何だかとても大人に見えた。
ぼくを見つけると、手をあげてくる。
はまっちを自分の彼女だと言えるのは、今日が最後だと思うと、ぼくは知らないうちに唇を噛んでいた。
「さあ、今日はいっぱい楽しもうね」
「そうだね」
はまっちはぼくに手を差し出す。ぼくはそっと握る。
『はまっちの手ってこんなに柔らかかったっけ』
そんなことを思ったりするが、はまっちはぼくより前にズンズン歩き出す。
電車の中では、はまっちは心理テストをぼくに出してくる。
根拠があるのかないのかわからない心理テストをやらされる。
「やっぱり、うえっちってむっつりスケベだったのね」
そう言って笑ってくる。
ぼくはちょっと落ち込むふりをする。
「ウソ、ウソ、ウソ。うえっちって真面目だものね。でも、うえっちが私のことを書いてくれた絵、あれはヤバかったね。まだ、小学生だったのにね」
「まだ、持っているの?」
「もちろん、一生の宝物。時々、取り出して眺めているわ、裏の詩もね」
「そうか、うれしいな」
「でも、あの女性、わたしにしては大人すぎやしない?」
「そうだな、未来のはまっちだから」
「未来のわたしを想像して描いたの?」
「夢の中で、未来のはまっちを見たんだ」
「未来のわたしが半裸で、背中をうえっちに見せているということ?」
「そういうことになるね」
ぼくは思わず顔が熱くなるのを感じた。
「すると、わたしたち、そういう関係になっているということね。うえっちが覗き見でもしない限り」
「そういう関係って?」
「そういう関係はそういう関係よ」
はまっちも顔が赤くなっていた。
いったい、そんな日が来るのだろうか?今日を境に別れるというのに。
「ほら、しけた顔しないの」
はまっちに表情が読まれたのだろうか。
「そうだね」
「飴でも舐めて…ね?」
はまっちはハンドバッグから蜂蜜オレンジのど飴の袋を取り出して、袋を振ってぼくの手のひらに4、5個、落とした。勢い余って、床に落ちた飴を拾おうとした時、はまっちもそうしようとしていて、ぼくははまっちの指先に触れた。
ぼくたちは、思わず、顔を合わせて笑った。
「わたしたち、似たもの同士ね」
「そうだね」
何回か乗り換え、そんなことをしているうちに、電車は目的の駅について、僕たちは電車を降りた。