2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧
うえっちとけんかしたわけではない。けれど、なんだかすごく気まずかった。当分、うえっちに連絡できないような気がしてならなかった。 怜とは、毎日、一緒に帰った。 「もう、彼と前のように過ごすことはできないのかな」 わたしは誰に言うのでもなく、空を…
今朝、ふと以前の感覚を思い出した。 FAPを受ける前、正確に言うと、大嶋先生の本を読む前、私は何だか自分の脳が死んでいるという気がしていたのだった。 脳が死んでいるというのは、いささか、大袈裟かもしれないが、控えめに言っても、脳が萎縮してしまっ…
あれから以後、はまっちに会っていない。同じ学校だったら、自然と顔を会わせることもあるだろうが、違う中学校だから積極的に連絡を取って会わない限り、そういうことはない。 ぼくは何だか怖かった。あの時のはまっちが、小屋でふたりで過ごしたっはまっち…
こないだ、練習で友達にFAPをしていただいた。 私には、ずっと、自分が男性なのに、男性恐怖がある。 そして、友達と言える人は女性しかいない。もちろん、男性の友達がいたことはある、親友と呼べる男性もいた。 けれど、最後は必ず喧嘩別れで終わってしま…
U 言葉が心に届かないで、表面だけを滑っていく。こんなはずじゃなかった。はまっちに会ったら、言いたいこと、したいことがいっぱいあったのに。 「そうだ、はまっち、ぼくのサイクリング車の後ろに乗らない?」 「…ありがとう。でも今はやめておくわ」 悲…
朝起きると、いきなり頭が痛い。 『昨晩は、疲れてそのまま寝ちゃったしなあ。まだ、疲れが残っているのかも』なんて思ってみて、このままだと頭痛を自分のものにして、一日中、これに悩まされることになる。 『ああ、そうだ。心に話しかけよう』と思って、…
U ぼくは借りてきた猫のようになって、はまっちの右に座って、しばらくは3人で話した。 はまっちは「ええ」とか「そうかしら」とか言っていて、ぼくの知っているはまっちとは全くの別人のような気がしてならない。 『ほんとにここにいるはまっちは、あのは…
「光の国からぼくらのために、来たぞ、我らのウルトラマン〜♪」 光の人って聞くと、小さい頃見たウルトラマンをどうしても思い出してしまう。 光の国からやってきて、みんなのために怪獣と戦って、みんなを救うヒーロー。そうして、「ありがとう、ウルトラマ…
H うえっちを待っている間、何だか落ち着かなかった。鍵の開かないあの小屋のことが頭から離れなくて、何だか気持ちが沈み込んでいくような感じがした。 「ねえ、幸子は大切な人と、今だけ楽しければいいの、それともずっと続く関係を望んでいるの?」 なん…
(ナラティヴで書いています) 自己犠牲をする人は、まるで蜜を滴らせる樹木のようだ。 その蜜を吸いに、多くの虫が寄ってきて、蜜を吸う。場合によっては、もう蜜が出ないのに、もっともっと蜜をせがまれて、蜜を与え続け、ついには生命の源である蜜を与え…
うえっちに会う日の13時に、わたしは、あの病院の前で、怜と待ち合わせることになっていた。病院の前で待ち合わせるというのは何だかちょっとおかしなことのような気がしたけれど、行き先と自分たちの家の位置を考えると、そう変なことでもない。 『あの小屋…
昨日は、本を読みかけたが、本を読み続ける気力もなくなって、寝るまでの時間をなんとか埋めようとNetflixで映画を探した。 神経を昂らせないで落ち着かせてくれる映画、気力がなくても見れる映画、そんな映画はないかと思って見つけ出したのが、「蜜蜂と遠…
日曜日、母が珍しく作ったしょっぱい昼食を食べると、「どこに行くの?」という母の声を無視して、ぼくは白いサイクリング車にまたがった。 ここから、清瀬中央公園まで自転車で行くとなると、40分はかかりそうだ。 それでも、ぼくは自転車で行きたかった。…
無意識が活性化されて、無意識さんとのつながりが深くなってくると、いろいろな気づきが起こってくる。 けれども、ここで起こる気づきとは、自分についての気づきであって、他人についての気づきではない。 私たちは、自分について気づいて、自分の深淵を深…
それから、わたしは毎日のように、怜と家に帰っている。そう言えば、小学校の頃はうえっちと帰っていたんだなあと思い出さずにはいられなかった。 もうすぐ、ゴールデンウィークになる。うえっちの顔を1か月近くも見ていないなんて、初めてのことだった。 …
無意識には、無尽蔵に、無限に知恵がある。 といっても、無意識は神ではない。 だから、心の声を聞くといっても、心の声は神の声ではない。 心の声を絶対に正しいものとして神の声にしてしまった時、宗教が始まる。 オルタナティヴストーリー(alternativeと…
そんなふうに、中学校での日常は何だか面白おかしくすぎていったが、ぼくははまっちのことを忘れたわけではなかった。いつも心の中央にあって、はまっちのことを考えない日はなかった。 ある日、学校から帰ると、いつも通り、母は寝込んでいた。ぼくは、自分…
この頃のお気に入りの本は、「願いをかなえる自己催眠〜人生に変化を引き起こす9つのツール」(スティーブ・ランクトン著 上地明彦訳 金剛出版)である。 タイトルだけ見ると、よくある自己啓発本のようだが、全く違っている。 著書は伝説の心理療法家であ…
「あのね、藤堂さん」 わたしは、藤堂さんの優しさに心が解きほぐされたのか、今までのことを語りたくなった。 「藤堂さんじゃなくて怜でいいわ、浜崎さんも幸子でいい?」 「ええ」 「幸子、あなたが言いたいと思ったことは何でも言っていいわ。でも、無理…
『福笑い』という歌がある。 「きっと世界の共通言語は、英語じゃなくて、笑いだと思う」 笑いほど、おかしなものはない。 笑いは、いったい何の役にたつのか? 何の役にもたちはしないだろう。 笑いは何かのために存在しているのではない。 笑いはただそこ…
佐藤さんに催眠術をかけることになった。 「まず、親指と人差し指を立てて離して、それ以外の指は組んでください」 「こんな感じ?」 ショートカットにした佐藤さんが目をクルクルと好奇心でいっぱいにしながら言う。 「そうそう、そんな感じ」 「それから?…
ずっと、若い頃から強迫性障害(完璧主義)に悩まされてきた。 いろいろなことにものすごいこだわりがあって、そのこだわりがピタッとはまれば力を発揮できるが、そんなことは滅多になかった。 覚えているのは、例えば、中間期末テストの勉強。不思議なこと…
階段を降りて、昇降口でスニーカーに履き替え、校門まで歩いた。グラウンドを走っている上級生男子の野太い掛け声が聞こえる、それに混じって、ついこないだまで通っていた隣の小学校の生徒たちの黄色いも聞こえてくる。 わたしもあそこにいて、うえっちと一…
私はどんな人でも救うという仙人のことを聞きつけた。 それで、私は、山を越え、海を渡り、森林に分け入り、仙人を探し求めた。 その甲斐があったのかなかったのか、仙人が住む砂漠を見つけ当てた。 砂漠の中に、小屋がポツンと一軒建っている。 あれが仙人…
「心よ、光の人に憧れたり、光の人になりたい人がいるのはどういうことですか?」 「彼らは、光の人になったら、支配から逃れて自分の問題が一気に解決して、救ってもらう方から救う方になれると思っている」 「心よ、光の人になったら、イエスのように、祭…
U2 それから授業が始まった。小学校とは違って、各科目違う先生が教える。それだけで、大人に近づいた気がする。 特に、担任の大橋先生の授業は興味をひかれた。予習の段階で、教科書の文に対して自分で調べる項目を考え出し、調べて、班ごとにその数を競わ…
「町田君の世界」という映画を見た。 町田君という、人間が好きでたまらない聖人系男子?が、まるで正反対の、人間嫌いの女の子に出会って、関係を深めて、町田君も女の子も変わっていく話である。 町田君は、どんな人も愛して、どんな人にも親切にしている…
H1 わたしは寂しかった。どうしてこんなに寂しいのか、わからない。卒業式のあの日からうえっちに会っていないせいだろうか?それとも、家にパパが帰ってこなくなってママがうつろで、いよいよ自分の居場所がないと感じているせいだろうか? たぶん、両方な…