無意識さんとともに

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2022-01-01から1年間の記事一覧

井戸の中の星

深い井戸には、昼間でも、水面に星が映ると言われる。 昨日もオルタナティブ預言の練習をしていた。初めての方だし、軽い悩みを相手に聞いてもらおうと思っていた。 けれど、相手の方が予想外に深い悩みをおっしゃったので、聞いている私も、どこか心の深い…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 104〜U 24 橋がかかるその日まで

今の崖っぷちに追い詰められているような感じを、神楽坂さんや佐伯さんに言うことはできないと思った。こんなことを言えるのは、はまっちだけのような気がした。 部室の白いカーテンがぱたぱたと風で揺れる。その隙間から夏の日差しがきらめく。 ぼくは小学…

調律師

ピアノなどの楽器は調律がとても大切だと思う。 調律がされていない楽器を、いくら一生懸命に奏でたところで、耳に心地よい音楽は生まれない。 おそらく、人間も同じことだ。 心は、楽器以上に繊細な楽器で、いろいろなもののバランスの上に成り立っている。…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 103〜H23 待ち合わせ

わたしたちの街には何だか教会が多かったが、足を踏み入れたことはない。 わたしは福井君と怜と9時30分に秋津駅で待ち合わせた。 『何だか、だいぶ早く着いちゃったな』 そう思って見ると、もう怜はいた。私を見ると、微笑みながら小さく胸元で手を振る。 目…

カエルの預言

今、臨床催眠講座でオルタナティブ預言というものの練習をしている。 私は、この頃、あることで体調を崩していた。昨日もいくぶん回復したとは言え、まだ調子が悪かった。 こんな調子が悪い時には、インスタントスクリプトをしたくなる。 自分が受けるのでも…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 102〜U 23 崖の上に立って

それから、ぼくたちは3人で会うことが習慣のようになった、場所はいつも家の近くのファミレス。舌を出した女の子のキャラクターの人形がお出迎えしてくれる。 それにつれ、ぼくの評判はますます悪いものになっていった。 時には、机の上にここに書けないよ…

嵐の中で

フロイトは、無意識を発見してコペルニクス的転回を引き起こした。フロイト以前とフロイト以後で、心に対する捉え方はまるきり変わってしまったと言えるだろう。 フロイトはユダヤ人だったが、この発見をユダヤ人にだけ留めておきたくはなかった。そして、年…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 101〜H22 混同

うえっちに手紙を書いてから、わたしは返事が来るのを、毎日、待っていた。けれども、返事はなかなか来なかった。 けれども、時は歩みを止めることなく過ぎていった。 うえっちはわたしの隣にはいない、でもうえっちに似た福井君は隣の席に座っていた。 わた…

すべてはナラティブ

人は、色々な種類のメガネをかける。 サングラスやピンク、ブルーなどのファッショングラスもある。 サングラスをかければ世界は眩しいものから落ち着いたものへと変貌し、色のついたファッショングラスを掛ければ世界は色のついた世界へと、ピンク色の幸福…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 100〜U 22 神をめぐる対話⑵

「そういう意味で、シモーヌ・ヴェイユという人は、『無神論は精神の浄化だ』と言っている」 『シモーヌ・ヴェィユって初めて聞く名前だ』とぼくは思った。 「人間の持つ神の観念は、神ではないのだから、当然、そういうことになりますね」 ぼくは人差し指で…

インスタントスクリプト

相手の悩みを聞いて、催眠導入(喚起)をして、私も相手もトランスの中に入り、インスタントでスクリプトを語っているうちに、心がほぐれてくる。 最初は、そんなことができるかと思っていたのだが、やってみたら、私の力ではなく、無意識さんの力でできるよ…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 99〜H21 手紙

福井君のことをぐるぐると考えていたが、頭の中で、いつの間にやら、福井君はうえっちの顔に変わっていった。 『うえっちはどうしているだろう?わたしのことなんか、もう忘れちゃったかな?』 そう思うと落ち着いていられない。左足首には青色のミサンガが…

嫉妬

私は、嫉妬なんて大したことないと思っていた。 それで、嫉妬が来るならどんとこいなんてたかをくくっていた。 ところが、催眠の練習相手と話していて、お相手の方も、人に嫉妬されると体がまったく動けなくなると言う。 そう言えば、思い返せば、過去に、た…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 98〜U 21 神をめぐる対話⑴

テーブルを挟んで、神楽坂さんの向かいに、窓際にぼく、そして隣に佐伯さんと座った。レディファーストで、佐伯さんを座らせようとしたが、それとなく袖を引っ張って来て、いきなり神楽坂さんの正面に座るのは緊張するのだとわかった。 『佐伯さんでも緊張す…

「すべてのことに感謝せよ」という教え

今日は、小説を書いていて、キリスト教時代の苦しいことを思い出した。 「すべてのことを感謝せよ、悲しいことも苦しいことも、すべてのことを」、かくして、プロテスタントは、どんな病気になってもどんな不幸に見舞われても、「ハレルヤ、この病気も不幸も…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 97〜H20 十字架

福井君は、それからは妙に大人しい。何だか、いけないこと聞いちゃったかなと、わたしは思った。もう、授業中に、本は読んでいない、ただ、教科書を立てて、寝ているだけだった。 それでも、ある日、10分休みの時に話しかけてきた。 「浜崎さん、これ、約束…

自動書記

催眠に自動書記というのがあるらしい。 トランスに入って、紙に文字や絵を書きつける、場合によってはこれから自分がしようとしていることを書いていて、後から見ると予言のようにも見えたりする。 ミルトン・エリクソンも、公開で、ある女子大生に催眠をか…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 96〜U 20 某ファミレスにて

ぼくは、佐伯さんと、約束の場所、つまり家のすぐ近くの某ファミレスまで歩く。中学生で帰りにファミレスに寄るなんてマズイ気も少しはするが、もうどうせ、不良と思われているんだし、構やしないよなと思ってみる。後ろをついて来ている佐伯さんにいたって…

共感をなめていた

『人にどれだけ共感されても、私は癒されない。もう、共感なんてごめんだ』と、私はそんなふうに思っていた。 先日、臨床催眠講座で、リフレーミングを扱っている時もそう思って、はっきり言って共感をなめていた。 ところが、その後の練習で、お相手が私の…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 95〜H19 秘密

「ああ、あれね、授業がつまらなすぎたから」 福井君は、授業中、ああいうふうに関係のない本読んだり、寝ていることもある。それなのに、成績はトップクラスで正直、うらやましい。 「ところで、何の本、読んでたの?」 「それ聞く?」 「聞いているんだか…

自分軸へ

だんだん、人のことが気にならなくなってきている。 講座に出ている。以前は、質問することもデモに出ることも、ものすごい重圧を感じていた。そういう重圧を感じて、それでも質問したり、デモに出たりしたのは、無意識さんがGO GOと言ったのもあるが、人に…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 94〜U 19 子犬のような

それから、佐伯さんは、ほんとに飼い主につきまとう子犬のようにぼくの後についてくるようになった。ぼくの評判というと、これまでもひどいものだったが、もう完全に地に落ちた、曰く、「二股野郎」「ハーレムを作っている最中」だとか、さらに口を出すのが…

砂糖漬け

思えば、小さな頃から砂糖漬けだった。 ご飯がまともに3食出たことがなくて、緑と白のマーブルの大きな円筒形の缶を持たされて、ビスケットやらチョコレートやらが主食だった。 幼稚園のお弁当の時にさえ、渡されたのはパンに甘いイチゴジャムを挟んだサンド…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 93〜H18 福井君

中2になって、怜とは変わらず一緒に帰っていたけれど、クラスは別れた。わたしは2年E組になった。 担任は、熊井隆という男性の先生で、文字通り、熊のような体型をした体育の先生だった。何かにつけ、「みんなで一緒にガンバロー」が口癖で、みんな表面上…

団体に属することは…

ある宗教団体に属すると、それらしい顔つきになるから不思議だ。 仏教徒には仏教徒の、クリスチャンにはクリスチャンの、カトリックにはカトリックのそれらしい顔つきがある。 顔つきだけではない、それらしい言葉遣い、態度、醸し出す雰囲気がある。 もしか…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 92〜U18 お友達

ぼくはずんずんと歩いていく。それでも、佐伯さんは後からついてくる。どこまでついてくる気だと思ってしまう、家が知られたら嫌なので、あえて巻くように中学校の隣にある団地の中をジグザグに進む。 「待ってくださいよ〜」 その声も煩わしく、ぼくは後ろ…

灯台

昨日、催眠の練習相手から、「灯台」という、わたしに関する本のタイトル(メタファーの一種)をいただいた。 私はヒーローになりたかった。 みんなに賞賛される正義のヒーローでもいい、みんなに罵倒されるダークヒーローでもいい、ヒーローになりたかった…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 91〜H17 朝

泣き疲れてしまったのか、そのまま眠ってしまっていた。気がつくと、もう朝だった。台所からトントンと心地よいリズミカルな音がするようだ。炊き立てのご飯の匂いもして、わたしは次第に目を覚ました。 畳の上に置かれたちゃぶ台のうえには、焼き鮭、味噌汁…

孤独は自由の表れる場所

「あの子は貴族」という映画を見た。 お金持ち、そしてまたその上の階級の良家の人が、どんな気持ちで、どんな生活を送っているのか、普通の人と対比する形で描かれていた。 小さい頃、『ああ、お金持ちの家に生まれたらなあ』と思ったものだが、これを見る…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 90〜U17 侵入者

クラスではそんな感じだったが、文芸部では相変わらずだった。ただ、違うのは僕が部長になったことぐらいだった。他には、3年生になった岡本さんはいつも通り文庫本を読み耽っていたし、そして2年生になった伊藤さんは立ち上がってぶつぶつつぶやいて歩き…